最初の頃はお互い睨み合ってたけど…。
途中から凄く楽しそうな表情になって、試合してる四人が羨ましくなった。
第17話:そして僕等は行く
試合はその後、ブン太達が巻き返して5−4。
このままブン太達が勝つかなって思ってたけど…。
「30―40!!」
ジャッカルの声が響く。
現在サーブは昇たち。
昇がサーブを打つ。
ラリーが続き、赤也が勝負に出た。
「これでおーわりっと!!」
スマッシュを打ち出す赤也。
「決まりましたね」
比呂士がそう言った後だった。
誰もが決まると思ったそのボールのすぐ傍に、
昇が居た。
「出た!クイックプレー!!」
ジャッカルが叫んだ。
もう届かないと思った瞬間、体を捻り、ボールを打ち返す。
そのボールが、決まる。
「げ、ゲーム鳳・才崎5−5!!」
「あ、あれは…」
あの技は―、
「へへん、やりぃ」
「決まったね、
湊先輩の”スライスカウンター”」
ニッと笑い、長太郎と昇が手を合わせる。
へ〜と、私の隣で精市が言った。
「あれが湊が才崎に伝授した技…ね」
「”スライスカウンター”…俺のかまいたちと同じようなものか?」
「ちょっと違うかな…スライスっていうか…カウンターを打つ際に少し体を捻って回転を鋭くするだけだから」
「それでも技術が上がれば威力はますと思うけど?」
「でも”スライスカウンター”ね…確かにちょっとだけラケット傾けるけどね」
アハハと苦笑いする。
でもやっぱり、私が教えた時よりも回転が掛かっていて…。
成長したんだね、昇。
「へぇ〜…湊の技ね」
「破っちゃいましょうよ、丸井先輩」
「おう、此処からが勝負…だろぃ?」
そう言って、ニィと笑うブン太と赤也。
「一・球・入・魂!!」
長太郎がサーブを打つ。
現在6−5、ブン太と赤也がリード。
そして尚且つ…40-30。
次、ブン太達が決めれば、試合は終わる。
「くぉりゃっ!!」
赤也がサーブを打ち返す。
また、ラリーは続く。
思えばこの試合、ラリーが凄く多かったような気がする。
まぁ確かに、お互いにボールを落とさずに拾ってるしね…。
「いっけぇえええ!!!」
昇が打つ。
ピンポイント…だけど、彼はそれを読んでいた。
「ビンゴ…だな…
今度こそ行くぜ、妙技!!」
これが、ボレーのスペシャリストと言われる実力だろうって本当に思った。
ブン太の打ったボールは、綺麗にネットの上を転がり、昇達のコートに落ちた。
「…”綱渡り”」
「ゲームセット!ウォンバイ、丸井・切原ペア!!」
「「よっしゃー!!」」
コートの中で、赤也とブン太がガッツポーズをとる。
「丸井、赤也、よくやった」
弦一郎が言う。
「当然。俺が負けるはずねぇだろぃ?」
「っすよね?俺と丸井先輩ですし」
「まぁ、少し危なげなかったがな」
「それを言うなよなー仁王」
二人の周りに続々と集まる立海メンバー。
それに、私も加わる。
「二人とも、お疲れ様!」
「おう!」
「ハハッ、どもっす!!」
「あーぁ…負けたな」
向こう側から聞こえる、昇の声。
その顔は笑ってはいるものの、やっぱり悔しいらしい。
「俺絶対勝てると思ったのに」
「まだまだレベルが足りなかったね…帰ったら跡部さんに練習増やされるかも」
「え?!マジ?!」
「長太郎も昇も…お疲れ様」
ニコッと二人に笑いかける。
そうすると、昇が少し泣きそうな顔をする。
「あああああもう!!姉ちゃんの前で負けるなんて!!」
「ハイハイ、負けは負け、だからね?」
「わかってる!!…
丸井さん」
「あぁ?」
昇の言葉に、ブン太が振り向く。
そして、ニッと昇が笑う。
「姉ちゃんのこと…お願いしますね!!」
ポカンとするブン太。
でもすぐに…
「…あぁ、当然だろぃ」
そう言って、笑った。
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