「行く」

「駄目」

「絶対に行く」

「絶対に駄目」





第13話:気づき






今日は休み明けの日。

勿論学校がある訳なんだけど、私は今自分のベッドの上に居る。



「行く」

「何言ってるの、熱が40度近くもあるのに無理でしょ」

「大丈夫だってお願いっ!!」

「絶対に駄目」



顔の前に手を合わせてお願いするが、一項に聞いてくれない母さん。



「とりあえず、お薬置いとくからちゃんと飲んでおきなさいよ」

「ケチッ」

「なんとでも言え」



母さんキャラ変わってませんかなんてツッコミはおいといて…。

母さんは溜め息をつきながらも、部屋を出て行った。

母さんが遠ざかっていくのを見計らって、私はベッドから降りた。

別に玄関だけが出口って訳でもないしね。

制服に着替え、鞄を持つと、窓をあけて部屋から抜け出した。

まぁ大丈夫よ、此処二階だけどベランダから下りれる高さだし…。

そんなこんなで、母さんには悪いけど…行って来ます!










学校―。


「湊のヤツ…休みか?」

「何じゃ丸井。気になるんか?」

「まぁ一応な…ちょっとこの間俺等が連れまわしすぎた所為かなーとか…」

「あれくらいでへばるんじゃったら俺等のマネなんて出来んじゃろ」



雅治の言葉で、考え込むブン太。



「まあそれもそうだな」



ガラガラッ

ドアが開く音がして、2人が音の方を向く。



「おはよー…」

「湊!!お前、もう2時間目だぞ?」

「あはは、ごめんごめん、寝坊しちゃった」

「たくっ…変なとこ抜けてんな」

「・・・」



ブン太と私が会話するのを、雅治が黙って見ていた。

その視線に気づいて、雅治に問う。



「さっきからどうしたの?雅治」

「お前さん…いや、まぁいいんじゃ」

「?変なの…っていつものことか」

「いつもは余計じゃ」



とりあえず、先生が教室に入ってきたので、席に着いた。

授業を聞いていても集中できないし、何より頭が痛い。

風邪なんて久しぶりに引いたよ本当に…。











授業も午前は終わり、今は昼休み。

あと午後の授業と部活を乗り切れば、家に帰れる。

何度か保健室に行こうかなんて考えたけど…



まぁその必要はないか。



「…いたっ」



頭痛がして、思わず壁に寄りかかる。

そういえば何だか熱い気がするけど…。



「湊?」



声を掛けられ、振り向く。

そこには、精市が立っていて、此方を不思議そうに見ている。



「あ、精市…」

「何して…ん?」



何かに気づいたのか、精市が此方に寄って来る。

どうしたんだろうと思って見ていると、精市の手が私の額を触る。


「せ、精市…?」

「やっぱり…」


精市の顔を見ると、何やら呆れた表情。





「湊」

「は、はい…」




何だか声が低くなったので、思わず敬語になる。

ていうか何だか恐いよ精市。



「どうして学校に来たの?」

「え、義務教育だし…当たり前でしょ?」

「じゃなくて、どうしてこんなに熱があるのに来たんだい?」






ギクッ




「あはは、何言ってるの精市君、熱なんてある訳ないじゃない」

「そんな赤い顔して…よく言えるね?」

「いやいや、精市が近いから赤いんだって」

「立ってるのだって辛いんだろう?」

「だーかーらー大丈夫だってば」

「ふーん…」




お、何だ?

もう諦めたのか?








…と思った私が馬鹿だった。



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