「あぁ、スッキリした」

「だろうな、思いっきり顔歪んでたし」

「…なんでアンタがモテるんだろうね、景吾」

「ハッ、俺だからに決まってるだろ」



いや、何か理由になってないし…。

相変わらずだな。



「さて、湊お風呂まだなんでしょ?」

「ああ、そうだった…行かないと」

「それじゃ、ブン太は送って行ってあげてね」

「お、おう…」

「じゃあな」

「あ、景吾!!」



景吾が行こうとしたので、呼び止めた。

そして、ニッコリと笑顔を作って、



「悪いけど、氷帝の皆にこのこと伝えといて!」

「アーン?俺は伝達係じゃねぇっての」

「いいじゃない、ね?お願い!」


顔の前に手を合わせて頼むと、仕方ねぇなと言いながらも引き受けてくれた。







…おまけつきで。



「おい丸井、いいこと教えてやる」

「何だよ?」

「お前、湊と初めて会った時、もの凄く嬉しそうな顔されなかったか?」

「まあされたぜ」



…え、ちょ…景吾まさか…。

ニッと口元を上げて景吾は笑うと、面白そうに言った。







「コイツ、ミクスドの時に岳人と組んでてな、その時岳人のことが好きだったんだぜ?それから赤毛が大好きらしくてなあ?青学との練習試合の時は真っ先に菊丸のところに行きやがったんだぜ?」



…あぁ、やっぱり…。

顔がカァアアと熱くなるのが分かった。

ブン太はやっぱりポカンとしてて、精市はクスクス笑っていた。



「ま、お前も赤毛だし、可能性はあるんじゃねぇか?」

「なっ?!」

「でもまあコイツ振られてるしな、今は岳人の方がコイツに惚れてるし…精々頑張れよ」



そういい残して、景吾と精市は去って行った。

…言いたいこといって逃げるってどういうことよ。

ブン太の方を見てみると、未だにポカンとしている。



「ぶ、ブン太…?」

「お前がさぁ…」

「え?」



こっちが名前を呼んですぐ、唖然としていた筈のブン太から言葉が発せられたので、正直ビックリした。

何だかブン太はちょっと不機嫌そうに、私の顔を見て言った。



「前に赤毛に思い出があるって言ってたの…向日のことだったんだな」

「え、ちょ…ちがっ…」



いや、違わないけど…違わないけどさ!!

何か嫌な空気だコレ…!











あぁ、何か腹が立ってきた…。

嫉妬かよ、ダサすぎんだろぃ、俺…。






「そ、そのね…岳人の事は、もう何とも…じゃないけど、可愛いとしか思ってないからね?」



…自分で言ったものの、このフォローはないでしょ、このフォローは…。



「好き…とかじゃないんだな?」



何聞いてんだ俺…。

こんなの答えにくいに決まってんだろ。




「あ、うん…違うよ?」

「そ、そっか…」



そう言うと、ブン太は顔を隠すように、ズンズン歩いて行った。

ブン太の耳は少しだけ赤くて…照れてんのかな?

だったらいいなって思ったよ…。

自惚れでもね。

その後私は無事にお風呂まで着いて、後から来た筈の杏ちゃんから大丈夫かとずっと聞かれた。

任務を果たしたブン太はさっさと部屋に帰って、それを見ていた杏ちゃんが「青春ですね」と呟いた。

「何で青春なの?」って杏ちゃんに聞いたら、「湊さん自覚とか無しですか?」と言われた。

…何の自覚だろうね?



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