なんか、目尻が熱い気がする。
「俺としては、まだ続けられるんだったら、続けて欲しかったんだけど…」
「俺たちとしても同じ気持ちだ。だが…現実それは出来ないらしくな」
精市も景吾も、暗い顔をする。
やめて…そんな顔させたいわけじゃない…。
「なんでだよ…あんなに楽しそうにテニスやってたのに…」
うん…楽しかったよ、ブン太とのテニス。
ああ、やっぱりテニスって楽しいんだってまた思えることが出来たから…。
「ごめんね…皆に、そんな顔させちゃって…」
「…っ湊は何も悪くないだろぃ!!」
「…あのね、ブン太…。あの時のブン太とのテニス…楽しかったよ」
「湊…」
「あの時ね、サウスポーになれば、またテニスやること出来るんじゃないかって思ったんだ」
でもやっぱり…サウスポーに慣れるまでには、時間が足りなくて…。
自分が今年で三年ということを、もの凄く恨みたくなった。
「私も…皆みたいに全国に行きたい!とか勝ちたい!とか思ってた…でも、ちょっとしたミスでこんなことになっちゃって」
あの時…少しだけ試合に余裕はあったんだ。
なのに…無理にロブを取りに行った所為で、こんなことになった。
でも、あのロブを取った事に後悔はない。
結果的に入って、私は勝てたんだし…でも、結局辞退しちゃったけどね、地区予選。
「だから…さ、私の分も頑張って貰おうと思って、昇には私が教えられることは全て教えた」
自分がこれまでやってきたことを、どうにか残したくて…
結局昇に押し付ける形になってしまった。
だけど、昇は何も言わずに、素直に私の指導を受け入れてくれた。
今ではちゃんと、私のプレーを自分のものにしている。
「でもやっぱり、自分のチームが勝ってほしいの!氷帝の皆には悪いけど…やっぱり私は今一緒に居てくれる立海の皆に勝って欲しい」
「湊…」
「それにね、それだけじゃ満足出来ないんだよ、私」
ニコッと笑って言うと、三人は少しだけ目を見開いた。
空元気でもいいから、三人に元気な姿を見せないと…。
ただ、皆の笑顔が見たいだけなんだ。
「今年は間に合わない…でも、高校に入ったら、またテニス始めようって思えるようになったんだ」
中学最後の夏には間に合わないけど、せめて、せめて高校生になったら…。
またテニスをしたい。
最初はサウスポーに変えようなんて気もなくて、自分が辛くなるからテニスにも関わりたくないって思ってたのに…。
変わったんだよ、立海の皆のおかげで。
勿論氷帝や、周りの皆のおかげでもあるんだけど…。
「だから、さ…そんな辛気臭い顔しないでよ、特にブン太!似合わないし」
「な、うるせぇ!!」
少しだけ怒るブン太を見て、精市がクスリと笑った。
それに、分かりづらいけど景吾も少しだけ笑っている。
「あはは、今の顔面白かったよ、ブン太」
「お前なー…今までの俺の心配返しやがれ!」
「無理…それは無理」
「なっ!」
ほら、やっといつものブン太だ。
君はそうじゃないと、ブン太じゃないんだよ?
「泣けよ」
「え?」
「無理して笑うより、今泣いといた方がいいだろぃ?」
ニッと笑うブン太の顔が、グニャリと歪んだ。
それで、自分の目に涙が溜まってるんだって分かった。
あぁ、泣いちゃった、泣いちゃったよ…。
「あ、あんま見ないでよ…恥ずかしいから」
「どうしようか?」
「ちょ、精市!こういう時ぐらい気を使ってよ!」
「まあ、こんな時ぐらいじゃないとお前の泣き顔見れそうにないだろうしなぁ?」
「ちょ、景吾まで…!」
「まぁ泣いとけって、お前がどんな顔したって、俺等気にしねーから」
「…後で覚えてろよ」
嫌味を言われ、それに返しているのにも関わらず、私は三人の前でワンワン泣いた。
あんまり人前で泣くのは好きじゃないんだけど…君達の前では泣いても大丈夫だなって思った。
何だかんだ言って、三人は優しく見守ってくれたしね。
← →