「ちょ、心臓に悪いっ…」
「心臓に悪いのはどっちだってんだ」
「すいません…」
ブン太が言う事はもっともだったので、とりあえず誤っておいた。
というか、思いの外ブン太と顔が近い…。
顔が赤くなるのがすぐに分かって、とりあえず目を見ないように逸らした。
ポタッとブン太の髪から私の頬に雫が落ちた。
「つめたっ」
「あ…悪ぃ」
「ちゃんと吹かないと風邪ひくよ?」
そう言うと、ブン太の肩に掛かっていたタオルで、ブン太の髪を拭いた。
「さ、サンキュー」
「どういたしまして」
改めてブン太と目を合わせたら、ブン太の顔が真っ赤になっていた。
え…なんで真っ赤?
そんな顔されたら、調子狂うんだけど…。
「おーおーお二人さん、いちゃつくのもその辺にしときんしゃい」
ニヤニヤとお風呂場から出てきた雅治の声で、二人とも我に返った。
ていうかどこぞのエロ親父ですかアンタ。
「それは湊には言われとーないのー」
「え、雅治も読心術使えるの?!」
「口に出てましたよ、湊さん」
あ、久しぶりの比呂士…
てか本当?
私口に出してたの?
「それはいいとして…湊さん、女湯でしたらあちらですよ」
そう言って、私が来た方と反対側を指す比呂士。
「え、あ…ありがとう」
「また迷ったらいかんからなぁ、丸井、途中まで送ってやったらどうじゃ?」
「はぁ?!」
「別にいいじゃろ…覗きに行くわけじゃないんじゃき」
「そ、そりゃそうだけど…」
あ、ブン太なんか困ってる…。
無理に着いて来させるのもな…でも私また迷っちゃいそうだし…。
「じゃ、比呂士着いてきてくれないかな?」
「私ですか?」
「う、うん…私道わかんないし…」
「私は構いませんが…」
そう言うと、チラリとブン太の方を見た。
それに気づいたらしく、ブン太がウッという顔をした。
「ま、待て!俺が行く!!」
「え、ブン太…嫌だったらいいんだよ?」
「俺が行くって言ってんだろぃ!別に嫌じゃねーよ」
「そ、そう?じゃあお願い…」
ちょっと焦って言うブン太を見て、雅治と比呂士は笑っていた。
それに気づいて、ブン太は少し嫌そうな顔をした後、私の手を繋いだ。
…繋ぐ必要ないんだろうけど、逸れちゃいやだから繋いでいよう…。
← →