「若葉お姉ちゃん、若葉お姉ちゃん」
「はい、何ですか夕香ちゃん」
花瓶の水を変えて病室に戻れば、嬉しそうに笑う夕香とそんな夕香に微笑みかける若葉。
何だか本当に姉妹みたいだななんて思う自分に、思わず苦笑い。
コトンと花瓶を置けば、夕香が笑い、若葉が「お帰りなさい」と小さい一言。
若葉の座っている椅子の近くにもう一つ椅子を置き、その上に腰を降ろす。
「すまないな、若葉」
「いいえ、私も夕香ちゃんとお話出来て嬉しいですし」
いつもからじゃ考えられない程よく笑う若葉…あ、いや…これは失礼か。
そんなことを考えている俺に、若葉がクスリと笑う。
「先程からどうしたんですか、豪炎寺さん」
「あ、いや…何でもない」
「そうですか?何かおかしいですよね、夕香ちゃん」
「うん、お兄ちゃんなんかおかしい」
そう言って二人して俺をからかう始末。
おかしいのはお前だ若葉。
円堂たちが見たら驚くぞ。
クスクス笑っている若葉の横で、夕香が目尻に涙を溜めて欠伸する。
眠いのか、と問えば、虚ろな瞳でこくりと頷いたので、掛け布団をかけて頭を撫でてやる。
そして「おやすみ」と言えば、舌足らずな発音で「おやすみなさい」と言って目を閉じる。
規則正しい呼吸をしているのを確認すると、ふうと一息ついた。
「…可愛いですね、夕香ちゃん」
「ああ」
「羨ましいです、豪炎寺さんが」
「若葉?」
「私…一人っ子なので…兄弟とか憧れるんです」
そうどこか寂しそうに言う若葉。
そんな若葉を見ていて、俺は反射的に手を伸ばし、夕香にしてやるように頭を撫でる。
流石に驚いたのか、慌てて「ご、豪炎寺さん?」なんてどもる若葉。
「甘えていいんだぞ」
「え?」
「俺でいいなら…甘えてくれていいんだぞ」
「でも…豪炎寺さんに甘えられるのは夕香ちゃんの特権ですから」
「じゃあ夕香の分も若葉の分も受け止めてやる」
そう笑いかけながら言えば、嬉しそうな表情を見せた後「少しだけ」と言って俺の肩に頭を寄せた。
ほっとする隣
(豪炎寺さんの隣…好きです)
(…そんな顔でそんなこと言わないでくれるか)