まぁ悪い気はしないと思う。






episode6、one step







「嬉沙ちゃん、次移動教室だよ」

「ん、了解」



切原があたしに話しかけてくるようになって結構経った。

あたしはというとそんなに変わらないし、相変わらず”切原”呼び。

真知から「赤也って呼んであげたら?」なんて言われるけど…別に”切原”のままでいいと思うし…。



「赤也、ねぇ…」

「あれ、呼ぶ練習?」

「な訳ないでしょ」

「そうなんだ…がっかりだなぁ」

「何で?」



あたしが尋ねると、真知が困ったように笑った。



「だって…嬉沙ちゃんにはたくさん友達出来て欲しいし…切原君、いい人だし」

「いい人、ねぇ…まぁ確かにそう言われればそうだけど…アイツ馬鹿だし」

「馬鹿で悪かったな」



声がしたので振り向くと、切原が口の端をピクピクさせながら立っていた。

そんな切原に、無表情のまま言う。



「あたしは間違ったこと言ってないよ?」

「相変わらずだなお前」

「周りに流されないってのが自慢なんでね」



ニッコリと嫌味で笑いかけると、切原が溜め息をついた。

いじめすぎ?

そんな訳ないでしょ、部活でもっといろいろされてるだろうし…。



「俺っていつまでもこんな扱いなのか?」

「何か言った?」

「別に?それよか、授業始まるぜ」



そう言って走っていく切原。


「ちょ、あんたの所為で立ち止まったんでしょ!」



そう言って、真知と二人で切原を追いかけた。












昼休み。

ご飯を食べ終わってゆっくりしていると、廊下の方から叫び声が聞こえた。

女子と男子の黄色い歓声…正直言って煩い…。

あまりの煩さに顔をしかめていると、教室のドアに目立つ二人組が来た。

どうやら歓声の原因はこの二人だ。

…というかこの人たちはアイドルか?

見た目で、すぐに誰だか分かった。



「幸村居るか?」

「…何か御用ですか?」

「おうっ!」



丸井さんと仁王さん。

三年生がわざわざ二年の階…しかもあたしの教室まで何の御用でしょうか。



「お前さんに頼みごとがあって来たんじゃ」

「頼みごと…?」

「そうじゃ」



ニヤリと笑う仁王さん。

この人はいつでも信用出来ないオーラ出してんだよな…。



「とりあえず、ガムいるか?」

「は?…あ、どうも…」



丸井さんにガムを渡されて、思わず受け取る。

完全に向こうのペースに押されて、もう訳が分からない。



「聞いていいか?」

「宜しければ早めに終わらせて下さい」

「まぁそう言いなさんな…お前さん、俺らのことなんて呼んどるんじゃ?」

「丸井さんに仁王さんですけど…」

「単刀直入に言うと、俺らことは名前で呼んで欲しい」

「…は?」



反射的に声が出る。

行き成り教室に来たかと思えば用件はこれ?



「あの…理由聞いていいですか?」

「俺たちが呼んで欲しい、そんだけ」

「はぁ…」

「別に構わねぇだろぃ?」



丸井さんがガムを膨らませながら言う。

まぁ、確かに構わないって言ったら構わないけど。



「別に構いませんよ」

「え?」

「だから、構わないって言ったんです」



あたしの言葉に、二人が顔を見合わせる。

たく、さっきから一体何。






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