嫌いになんて、なれる訳なかった。







episode3、don't like






最悪、その一言だった。

あんまり通りたくなかったけど、コートの横を通る方が近いから通った。

…かなり選択を誤った気がする。

今、私の目の前には、切原とテニス部のレギュラー陣。



「久方ぶりだな、嬉沙」

「…ご無沙汰してます、柳さん」



まぁ、挨拶されて返さないのは失礼だしね。



「真田さんも、ご無沙汰してます」

「うむ、久しぶりだな、嬉沙」



柳さんと真田さんは、よく家に来ていたから、それなりに顔見知りだ。

私が嫌いなのはテニスであって、兄さんの友人としての二人なら、別に嫌いじゃない。

寧ろ、いい人たちだと思ってる。



「こうして見ると、似てねぇな」

「まぁ女子と男子ってのもあるんだろう」



後ろの三年生が、あたしを見ながら言う。

多分、見てるのは《幸村精市の妹としてのあたし》なんだろうけど。



「初めまして、幸村嬉沙です」

「おう、俺は丸井ブン太」

「仁王雅治じゃ」

「柳生比呂士です」

「ジャッカル桑原だ」



どの名前も聞いたことある名前ばっかり。

一応、流石テニス部とでも言っとくか。



「嬉沙、もう帰るのかい?」



兄さんが言う。



「ううん、先生に提出するものがあるから…それ出したら帰るよ」

「そっか、気をつけるんだよ」

「大丈夫だよ、そんな危ないとこ行く訳じゃないんだから」

「それもそうだね」


フフッと笑う兄さん。



「嬉沙」


切原が言う。





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