どうせなら、嫌いになってくれれば良かったのに。








episode2、頼んだよ










「あたしはね、テニスなんてスポーツ…大ッ嫌いなの」



アイツが言った言葉が、ずっと残っていた。

幸村部長の妹が、テニスが嫌い?

ありえねぇだろ、そんなの。

アイツが幸村部長と話してる時、嫌そうな顔なんて1つもしてなかった。

部長が嫌いってことはない…。

あぁ!訳わけんねぇ!

イライラする…授業なんて受けてらっかよ。



「めんどくせぇ」



そう呟いた声は、後ろに居るコイツには聞こえてないだろう。

そういえば、コイツ、仲のいい女子居たよな?

確か…




「米倉」



俺がそう呼ぶと、米倉はビクッと体を震わした。

そして、恐る恐る俺の顔を見る。



「切原…君?」

「ちょっといいか?」

「え、あ、うん…」



俺に急に話しかけられて驚いてんのか。

ま、仕方ないよな。

俺と米倉、話したことなんてねぇもん。



「その…何?」

「いや、嬉沙のことなんだけどよ」

「嬉沙ちゃんの?」

「アイツ、何でテニス嫌いなんだ?」



俺の言葉に、米倉が驚く。

そして、口の前に手を持って行き、考えるようなポーズをとる。



「そっか…切原君…嬉沙ちゃんから聞いたんだ」

「あぁ、思いっきり睨まれてな」



あの時のアイツの顔、本当に嫌そうな顔をしていた。

そこまで、テニスを嫌うような理由があるのか?



「申し訳ないけど…」



米倉が言う。



「それは、私の口からじゃ言えないよ」

「…何で?」

「これは、嬉沙ちゃんの問題だから…私の口から簡単に言えない」

「・・・」

「だから、本当に知りたいなら、嬉沙ちゃんから直接教えて貰って」



そう言うと、米倉は申し訳なさそうに笑った。

そんな米倉に「悪かったな」と謝ったら、微笑みながら「力になれなくてごめんね」と返された。

ありえねぇくらいいい奴。

それが、俺が米倉に抱いた感想だった。





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