「あ、すいません」
「たく…兄貴はそんなんじゃなかったぞ」
カチン。
ほら、やっぱりそうですか。
「ほら、授業中だ!しゃきっとしろ」
「…すいません」
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴る。
「お、終わりか…それじゃ今日はここまで」
「起立」
学級委員の子が、号令をかける。
それに従って、皆礼をする。
「「「ありがとうございました」」」
次々と教室を出たり、次の授業の準備をしたりする。
そんな中、先ほどの教師があたしの前に来る。
「幸村、今度からちゃんとしろよ」
「…すいません」
それだけが言いたかったのか、教師は満足そうに教室を出て行った。
一体なんだったんだろう。
ハァとため息をつきながら、机に伏せる。
「大丈夫?」
頭上から、そんな声が聞こえる。
顔を見なくても誰かなんてすぐ分かる。
あたしの、たった一人の友達。
少しだけ長い髪を後ろでくくって、眼鏡をかけて困った顔。
まさに女の子ー!って感じで、こんな性格としては凄く羨ましい。
米倉真知。
それが彼女、あたしの親友の名前。
「おう、真知じゃん」
「あの先生相変わらずだね…いちいち言わなくていいのに…」
「大丈夫大丈夫、もう慣れっこだから」
「嬉沙ちゃんの嘘つき、全然慣れっこじゃないでしょ?」
「・・・」
本当に、この子には嘘がつけない。
でもね、真知。
君には迷惑かけたくないんだ。
「有難う真知。あたし、真知が心配してくれるだけで十分だから」
「で、でもっ!」
「真知は可愛いね〜、もうお嫁さんに欲しいよ」
「ええええ?!」
ポッと頬が赤くなる。
うん、可愛いよ。
そんな真知に、あたしは微笑んだ。
「嬉沙」
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