確かな気持ち、か。



episode28、恋ゴコロ





クラスメイトの視線があの事件以来気になる。

じりじりと突き刺さる視線が、正直痛い。

あたしなんか見ても面白くないだろうに。

「俺、嬉沙のことが好きだ!」

何度もあの言葉がリピートする。



「大変だね、嬉沙ちゃん」

「…真知」



にこりと微笑む真知。

このうえもなく楽しそうな笑顔。

さては、知ってたな。



「正直頭ついていけてない」

「嬉沙ちゃん、そっち方面苦手そうだもんね」

「疎いんだよ」



他人に興味を示さないように生きてた。

まして異性なんて、同性以上に興味がなかった。

そりゃあ、真田さんたちとは交流はあったけど、”兄さんの友達”って認識だし。

まさか自分に好意を持ってくれる人なんて、居ると思わなかったから。

正直、どうしていいか分からない。

誰かを好きになったことの無いあたしは、誰かを好きになる人の気持ちが分からない。

でも、それが理由で逃げちゃいけないんだってことは分かってる。

あいつはいつまでもあたしのこと待っててくれたんだから、曖昧には出来ない。

そこまで、甘えてちゃいられない…気がする。






「嬉沙ちゃん」






真知があたしに語りかける。

顔を上げれば、真知の優しい笑顔が降ってくる。



「切原くんと居ると、安心しない?」

「まあ、他の人に比べたら」

「切原くんが相手だと、自分に正直になれない?」

「…素に、なれるかな」

「じゃあ、それだけで充分じゃない」

「え?」



充分…?

これが…?



「嬉沙ちゃんは今まで自分以外の人との間に壁を作ってきたんだよ、でも、切原くんとの間にはそれが存在しない、そうでしょ?」

「…うん」

「切原くんは、そこまで嬉沙ちゃんの中に入ってきているってこと」



気づいたらあいつが目の前に居て。

あたしとあいつの距離はなくなっていた。

そればかりか、あいつはあたしが自分のエゴの中でもがいているのを救ってくれた。

どうしようもなく単純で、おせっかいなヤツ…。



「でも、そうであっても”like”と”love”の違いだって…」

「嬉沙ちゃんの”それ”は、”like”じゃないと思うよ」



自分の胸に聞いてみて、と真知があたしの心臓辺りを指差す。

そこに、そっと手を当ててみる。

いつもより、速い鼓動。

今、あたしが考えていることはなんだっけ…?

ああ、そっか…あたし…。

胸の上で、ぎゅっと手を握る。

そして、真っ直ぐに真知に視線を向ける。



「ありがとう、真知」

「どういたしまして」

「あたし、ちょっと行くところがあるから行ってくる!」

「うん…HRまでには戻ってきてね」



そう言って見送ってくれる真知。

気づけばあたしは、走り出していた。







To be continue...


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