なんて惨めで、なんて滑稽で。
episode24、後悔
バタリと扉が閉じた後、あたしは膝とついた。
頬には冷たい感覚。
ああ、本当にいつぶりなんだろ、この感じ。
空を見つめていると、今のあたしは惨めで、滑稽で…気づいたら嗚咽まで始まってちゃって。
嫌な予感…当たっちゃった。
「そんなの…あたしにだって分かってたわよ…」
ただ逃げてるだけ、分かってた。
そして、今赤也を傷つけたことも。
思っていないことだってたくさん言った。
全てはあたしが傷つかない為に…いつの間にか、傷つくことが恐くて…他人を拒絶して自分を守るようになってたんだ。
そんなあたしに気づいて、赤也は悪者になってくれた。
わざとあたしを追い詰めるようなことをして、あたしの本心を引っ張り出した。
”あたしはテニスをしたいんだ”って。
「馬鹿は…全部あたしだ…」
自分可愛さに殻に篭って、それで兄さんや皆を傷つけて…。
自分の狭い世界の中で、自分と戦おうとせず、必死に自分を守って…。
ねえ真知、あたし強くなんかないの。
寧ろ弱くて、自分が消えてしまいそうで…誰かから否定されることが恐いの。
私個人として見て欲しいのに、私個人で見てもらえないんだって…始める前から決め付けて。
「兄さん、真知…ごめんね…!」
どれだけ辛い思いをさせたんだろう。
どれだけ悲しい思いをさせたんだろう。
あたしは結局あたしのことで精一杯で、誰の力にもなれていなかった。
「赤也…ごめん…」
本当は辛かった筈なのに…あんなことまでさせてしまって…ごめん。
自分で認めなくちゃいけなかったものを…今赤也がチャンスをくれたんだ。
あたしが変われるチャンスを…。
もっと早く気づけばよかったんだよね、こうすれば良かったって。
でも、プライドを守ることに必死で、クールぶって…。
そうすることの方がかっこ悪いのに、あたしにはそのことを認めることさえ出来なかった。
「嬉沙ちゃん」
気づけば、目の前に真知が居た。
まだ泣いているあたしの前にしゃがむと、ハンカチで涙を拭いてくれる。
「真、知…」
「だからって、自分を責めちゃ駄目だよ」
「え…?」
「嬉沙ちゃんは間違って無いんだよ、ただ、ちょっと道を踏み外しちゃっただけ…それを私も幸村先輩も知ってたから…全然辛くなんかなかった」
「真知…」
「私はね、嬉沙ちゃんに救ってもらったの!嬉沙ちゃんのお陰で、広い世界に飛び出すことが出来た、だから今度は私が嬉沙ちゃんを助けようと思ったけど…私じゃ無理だった…だから、切原くんに全てを任せた」
「赤也に?」
「そう、幸村先輩も…切原くんなら嬉沙ちゃんをきっと救ってくれるからって」
いつでも、真知と兄さんはあたしのことを見守ってくれてたんだ。
赤也だって…テニス部の人達だって…。
「私、嬉沙ちゃんのこと大好きだよ…それは”幸村先輩の妹”だからじゃない…”幸村嬉沙”だから大好きなの」
「・・・」
「ねえ、私は切原くんみたいにはいかないけど…たまには頼って?私、嬉沙ちゃんにはまた笑って欲しいんだよ」
「真知…うっ…!」
気づいたら、真知にしがみついて…大きな声を上げて泣いていた。
そんなあたしを、真知は優しく撫でてくれる。
まるで、兄さんみたいに…真知はあったかかった。
「真知、あたし…赤也に酷いことしちゃった…」
「うん」
「兄さんにも…テニス部の人たちにも…!」
「うん」
「あたし…まだ、間に合う、かな…?」
「…うん、まだ大丈夫…それに、嬉沙ちゃんの周りには、優しい人ばかりでしょ?」
だから、一緒に頑張ろう。
そう言ってくれた真知に、またあたしは涙が止まらなくなった。
To be continue...
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