どうしたらいいんだろうか。





episode21、戸惑い







練習試合当日。

周りは名の知れた学校ばかりで、俺はうずうずとしていた。

そんな中、見慣れた姿を人波の中に見つける。

来てくれたことが嬉しくて、あいつに駆け寄ろうとする。

けど、あいつは俺に気づく前に、走って逃げてしまった。

そんなあいつの背に、叫ぶ。



「…っ嬉沙!」



俺の声はあいつに届かず、あいつの姿は見えなくなる。

ふと、隣を見てみれば、見覚えのある顔が俺を見ている。



「お前…」

「立海の…切原か?」

「お前は…ルドルフの…不二か」

「ああ」



なんだか困惑した感じ。

俺が「どうしたんだ」と問えば、「いや」と目を逸らす。



「あいつ…」

「ん…お前、嬉沙を知ってるのか」

「嬉沙っていうのか、あいつ」

「は?」



何だ、知り合いじゃねえのか。

というかどういうことだ?



「知り合いじゃ…ないのか?」

「…前に話したことがあるだけだ…お互いに名前を言って無いし…」

「そうか」

「なあ、あいつって…」



誰なんだ?

その質問にどう答えるべきか悩む。

きっと、言わなきゃならない答えは、あいつの嫌いな言い方なんだろう。



「幸村嬉沙…うちの部長の幸村精市の妹だよ」

「え、あいつが?!…じゃあ、この間言ってた兄貴って立海の部長のことか」

「お前、嬉沙とそのこと話したのか?」

「…ああ、気持ちはよく分かるからな」



こいつには分かって、俺には分からないことがある。

俺には姉しか居ない。

こいつには青学に兄が居る…テニスをしている兄が。

こればっかりは仕方がないが、どうにも羨ましくて仕方ない。



「何て…言ってたんだ?」



悔しい、こんなことを聞かなくてはならないということが。



「…あいつは、兄貴…立海の部長と比べられることを嫌がってた」

「・・・」

「どう頑張っても認められない…俺が昔感じてたことを…あいつも感じてた」

「…嬉沙」

「…なあ、切原」

「…何だよ」



不二が俺を真っ直ぐに見る。

なんだか目が合わせられない。

…くそ、らしくねえ。



「あいつ…後悔してるよ、きっと」

「…後悔?」

「兄貴と同じことをしたいんだ、本当はな」



不二の言葉であの光景が浮かぶ。

二人で買い出しに行った時のラケットを見るあいつの顔。

どこか寂しそうで、ああ、そうか。



「不二」

「どうした?」

「…お前のおかげだ、サンキュー」



あんまガラじゃねえけど、感謝だな。



「…なんだかよく分かんねえけど、力になれたなら良かったよ」



ニッと笑う不二。

…兄貴と全然違う…いや、この言い方は失礼だったな。

嬉沙のことを考え始めて、当たり前のことを当たり前に感じなくなった。

なあ嬉沙、やっぱりお前のこと分かりたい。

不二みたいに分かってやるのは無理かもしれないけど、俺なりにお前のこと知りたい。



「赤也」



名前が呼ばれる。

それは幸村部長で、俺を見て微笑んでいる。



「何か…変われたのかい?」

「…うっす」





To be continue...


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