どんどん自分が変わっていく。
episode20、再会
ガヤガヤという人だかり。
ああ、来てしまった…そんな気分。
今あたしの目の前にあるのは都内でもかなり大きなテニス場。
今日此処では都内の有名校が集まって練習試合があるらしい。
赤也に誘われたからまあ来たものの…本当になんで来たんだろうか。
真知は今日用事があって来れないらしく、今はあたし一人。
とりあえず適当に見て帰ろうと、何だか重たい足を前に進めた。
どこもかしこもテニスウェアを来た集団。
まあそれは当然なんだけど、長い時間《そこ》から離れていたあたしにとっては少し苦痛だった。
いや、苦痛というか…。
「なんなんだろうなあ」
どうしてこんな寂しい気持ちになるかが分からない。
あたしはテニスが嫌いな筈だ。
それなのに、最近はあのグリップの感触が恋しくなる。
あのボールとガットがぶつかる音、全身に駆け巡る楽しさ…どうして今込み上げて来るの?
邪念を払うかのように首を振り、ふうと一息つき、見慣れた集団を探す。
あのユニフォームの色だ、見つからない筈はない。
さっさと見つけて挨拶をして帰ろう。
そして今日は早めに休もう、どうにも調子が狂う。
此処に居ちゃいけない、何故だかそう思うから。
そんなことを考えていると、奥のコートに目的を発見。
あたしが歩く側のコートでは歓声が上がる。
多分、勝敗が決まったんだろう。
…懐かしい。
駄目だ、何考えてるんだろうあたし。
「あれ、お前…」
聞き覚えがある声がする。
あたしに呼びかけたかどうかさえ分からないのに、何故だか振り向いてしまう。
そこに立っていたのはこの間兄弟について語り合った彼。
また会えたことが嬉しくて挨拶しようと思ったが、それは叶わない。
彼の姿を見て、あたしの口は動きを止めた。
彼が身につけているもの、それはまさしく、あたしの周りにいる奴らと同じ格好。
「聖…ルドルフ…」
「ん?へえ、うちのこと知ってたんだな」
「・・・」
「なあ、もしかしてお前の兄貴もテニスやって…お、おいっ!」
何か言っているのかもしれないけど、あたしは一目散に駆け抜けた。
此処には居たくない、その一心で、あたしの足は動く。
彼とは別の誰かの、あたしのことを呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、振り返ることなんて出来なかった。
To be continue...
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