近づいても近づいても、遠くて。








episode13、決意








やっと近づいた。

そう思った、そう思ったんだ。

なのに、近いと思った距離は思ったよりも遠くて、まだまだあいつに近づくには遠すぎて。

まだ時間にしたら少ないけど、一緒に居た。

一緒に居ることで、素直に笑うようになったあいつを見た。

あいつがどれだけ親友や兄、それにいろいろなものを大切にしているかが分かった。

同時に、その中に俺のことが含まれてきていることにも気付いた。

少なくとも、あいつは俺を他人としては見ていない。

ちゃんと、対等に接してくれている。

あいつのことが理解出来ている、そうきっと自惚れていた。

ちょっとあいつのことが分かったからって、それだけで頼りない自信を持って。

あいつがそう聞かれることが嫌いだって分かってて聞いた。



「どうしてテニスが嫌いなんだ」



そういえば、初めて聞いたんだ。

テニスが嫌いって聞いてから…初めて聞いた。

なんであいつがそんなに嫌いなのか、俺には分からない。

現に、嫌いと言いつつも寂しそうな顔をするあいつを見ている。

きっと何かあるんだろう、それをとってやりたい。

そういう気持ちが先走って、あんなことを言ってしまった。

自分の都合ばっかり押し付けて、あいつを傷つけて。

何が任されただ、何が仲良くなっただ。

俺は、結局何も分かってねえんだじゃねえか。



「馬鹿だよな…俺」



今では、あいつの顔を見る度に罪悪感を感じているのか、いつものような調子が出ない。

結果的に避けているみたいになっている。

けど、逃げてちゃきっと駄目なんだ。

あいつと、嬉沙とちゃんと向き合う努力をしないと。

焦らずに、一歩一歩あいつに近づいていく努力を。

その努力をする決意が、今までの俺にはなかったんだ。

軽い気持ちであいつを救いたいなんていうことはやめる。

あいつを…あいつだからこそ、俺は本気で力になりたい。

今なら、ちゃんとはっきり言える。

俺は逃げずに、あいつとちゃんと向き合おうって。






To be continue...


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