「どうかなさいました?」
「いや…その」
「お前さんが名前で呼ぶのは”米倉さん”だけと聞いちょるから…」
「先輩の頼みなんですから聞きますよ、最も、マネージャーになれなんかだったら絶対に聞きませんけど」
口だけで笑みを作り笑いかけると、はははと丸井さんが乾いた笑いを出した。
「なぁ仁王、こんなにあっさりOK貰っていいのか?」
「いいんじゃなか?最も、何で赤也が名前で呼んで貰えないのか不思議じゃが…」
「切原が何か言ってたんですか?」
「名前で呼んで欲しいんだと」
「へぇ…」
「丸井先輩!仁王先輩!!」
急に別の声が聞こえ、振り向くと、切原がズカズカ此方に歩いてくる。
そして、先輩達を睨んだ。
「何か用っすか?」
「お前じゃない、幸村にだ」
「名前で呼んで貰うように頼みに来たんじゃよ」
「はあああああ?!」
思わず声を上げる切原。
そして、血相を変えてあたしを見る。
「お前…どうしたんだよ?!」
「どうしたって…普通に”いいですよ”って言ったけど」
「普通に?!普通にってどういうことだよ!!」
「普通は普通でしょ…何一人で喚いてんのよ」
微妙な表情をする切原に、仁王さんがニヤニヤしながら肩を組んだ。
そして、あたしを横目で見ながら言う。
「”嬉沙”に名前で呼んで欲しいんじゃろ?赤也」
「な、何すか!!」
「そう動揺すんな赤也…もう”嬉沙”には言った」
「はあああああ?!」
丸井さんの発言に、切原が声を上げる。
「なぁ、嬉沙?」
ニコッと笑い、丸井さんが言ってくる。
あ、いや…丸井さんじゃもう駄目なのか…。
「はい、ブン太さんと雅治さんに聞きました」
呆れたようにあたしが言うと、切原の血の気が引いた。
そして、雅治さんの腕を振り切ってあたしの方に歩いてくる。
「嬉沙!」
「…何よ」
「先輩達のこと名前で呼んでいいなら、俺のことも”赤也”って呼べよ!!」
おお、言った…とブン太さんと雅治さんは呟いた。
あたしは、少しだけ沈黙した後、溜め息をついた。
「…”赤也”、これでいいわけ?」
「も、もう一回!」
「赤也、今度からそう呼べばいいんでしょ?」
「あ、あぁ!!」
その時の切原…もとい赤也の顔は凄く嬉しそうだった。
一方あたしは本当に呆れていて、ただただ溜め息をつくだけだった。
その光景を、ブン太さんと雅治さんがニヤニヤ見ていた。
「良かったのぉ〜赤也」
「よーし赤也…今日何か奢れよな」
「はぁ?!何でッスか?!」
「俺らのお陰で名前を呼んで貰えるようになったんじゃから…のぉ?」
「なぁ?」
「いやいや、何でそうなるんすか!!」
そんなこんなで、この日は終わった。
To be continue...
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