「…今日、悪かったな」
多分、あのことか。
適当そうに見えて、意外ときっちりしてるんだな。
ちょっと意外。
「別にいいよ」
「また、明日話そうぜ!」
ニッと笑う切原。
本当に元気な奴。
「うん、また明日」
「おう、また明日」
テニス部に別れを告げると、あたしは職員室に向かった。
切原…思ったより、いい奴だった。
テニス部ってことは抜きにして、ただの友人としてなら、付き合えそうな気もする。
別に悪い奴じゃなさそうだし…。
ま、次にテニスの話題持ってきたら、どうなるか分かんないけど。
「テニス、か」
どうして嫌い?
そんなの、そんなの…。
「そんなの、あたしの勝手でしょう?」
テニスを好きになろうが、嫌いになろうが、そんなのあたしの自由だ。
なのに、どうして皆そんなに気にするのよ。
幸村精市の妹=テニスが好き、なんて方程式、何処にもない。
テニスなんて、テニスなんて…
「あたしには、好きになれないよ」
兄さんがどんなに好きなものでも、これだけは、《好きになれなく》なった。
何故かなんて、そんなの考えたくもない。
言ったところで、理解して貰えない。
「なんだ、そんなことか」って程度だ。
「って、あたし…何考えてんだろ」
ハハッと自虐的に笑いながら、あたしは学校をあとにした。
To be continue...
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