「……ねえ、ベル」
「何」
「いつまでそうしてるつもり?」
「俺が飽きるまで」
「いつよそれ」
はぁと溜め息をつき、私に膝枕をされた状態の彼の体をポンポンて軽く叩いた。
今の私は暇じゃなく、スクアーロ隊長に報告書を提出しに行かなくてはならない。
そうだと言うのに、この王子様は何を思ったか私に正座させて自分はそれを枕にして甘えてくる始末。
…ああ、きっと今頃遅いとか言って隊長怒ってるんだろうな…また怒鳴られるんだ。(あの大きな声は頭に響くからなるべく怒られたくないのに)
そんなことを考えている私に、ベルは不機嫌な表情をする。
「何他の奴のこと考えてんだよ」
千里眼か何か持ってるのかなこの子。
「別に?ただどっかの誰かさんのせいでまた隊長に怒鳴られそうだなと」
「しししっ、それ俺のこと言ってんの?」
「他に誰が居るって言うのよ」
「だーいじょうぶ、俺王子だもん」
「何が大丈夫か全く分からないんだけど」
「俺が居たらスクアーロくらいどうってことないってこと」
どこから来るんだろうこの自信。
でも、もし二人が戦闘なんて始めちゃったらこのボンゴレ本部だってただじゃ済まないし、確実にボスが怒って事が大きくなる。
そうさせない為に、私が折れなくちゃなあ。
はあともう一度溜め息をつくと、ニヤニヤと笑いながら「溜め息つくと幸せが逃げるって知ってる?」なんて言われる。
本当に誰のせいだと思いながら彼の前髪に触れると、サラサラと指から零れ落ちた。
彼の髪は綺麗な金色で、本当に羨ましいくらい綺麗。
一応戦闘員ではあるが、まず始めに女である私は、少なからず髪には気を使っている。
やっぱり綺麗で居たいと思うのはほぼ一般的な女性の意見であり、私も例外じゃない。
そんな私たちが欲しくて欲しくて堪らないものを、彼は持っている。
「ベルの髪って本当に綺麗だよね」
「だって王子だし」
「いいなー…私もこんな風だったらな」
「梨音だって綺麗じゃん」
そう言って、私の髪を一房取って手の中で玩ぶ。
しばらくそうしていると、急にぐっと引かれてそのまま唇が塞がった。
状況についていけなくて唖然としていると、顔を離しながらまた「ししし」と笑った。
「梨音顔真っ赤。かーわいー」
「誰のせいだと思ってんのよ」
「梨音が可愛いのが悪いんじゃん」
「ベルが我が儘なのが悪いのよ」
「しししっ、ねえ、もっかいやってい?」
ニッと綺麗に並んだ歯を見せながら彼が言う。
どうせ拒んだってお得意の台詞を吐きながら実行するんだろう。
そんな彼に困ったように微笑みながら「好きなだけどうぞ、王子様」と言って、顔を近付けた。
なんだかんだ言って、甘いのは私の方らしい。
どんな我が儘でも聞いてあげる
(その後隊長にこってり叱られちゃったけど)
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