「…暑い」



外ではもう立秋も過ぎたというのにけたたましく鳴く蝉の声が響く。

ただでさえこの国は湿度が高くて蒸し暑いのだからこう夏だと主張されると暑さが増していく気がする。

こんな暑い日でも、いつも熱血なあの幼馴染は相変わらずでロードワークをやっているのだろうと思うといろいろな意味で感心する。



「そういえば…」



ぐたりと寝転んでいたベッドから起き上がり、壁に掛けているカレンダーに目を向ける。

そこには大きく丸がつけてあり、目立つように書いてある『birthday』の文字。(まあ勿論私の文字である)

時計を見ればもうじき日付が変わる時間。

そういえばもう一人の幼馴染である彼の妹から「ケーキを焼くから食べに来てね」と誘われていたなと思い出していると、コンコンと窓が叩かれた。

カーテンを開けて見ると、ニッと笑った幼馴染の顔があり、溜め息をつくと窓の鍵を開けた。



「こんばんは了平、今日もロードワーク終わったの?」

「おう、極限に終わらせてきたぞ」

「というか、こんな時間に女の子の部屋に訪れるなんて私じゃなかったら怒られるよ?」

「む、それはすまなかったな…ただ梨音の顔が見たくてな」



あ、そういうことか。

時計を見れば、すでに時刻は0時を回っていた。



「お誕生日おめでとう、了平」

「有難う、梨音」

「京子に誘われたし、誕生日会お邪魔するからね」

「それは極限に楽しみだ」

「それと…一番最初に会いに来てくれて有難う」

「…いいや、俺こそ…最初に会えたのが梨音で良かった」



二人して、何だか照れくさくて笑う。

こんな雰囲気に慣れていないわけではないけど、何だか無性にくすぐったい。

それは彼も同じらしく、先ほどからほんのりではあるけれど頬が染まっている。



「そうだ、パーティーまでの時間、私にくれるかな?」

「ん?」

「久しぶりに了平と二人で出掛けたいなと」

「喜んでお供しよう」



そう言う彼が面白くて、私はクスクス笑った。



「もう遅い、そろそろ寝よう」

「それもそうだね」

「おやすみ、梨音」

「おやすみ、了平」




そうして、了平が部屋に戻って行くのを見届けてから、私はゆっくりと窓を閉めた。











熱帯夜の逢瀬
(あんなに鬱陶しかった暑さも、いつの間にか吹き飛んでいた)



title by Aコース


Happy birthday!!

08,26


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