もうじき日付が変わる。
今日は俺の誕生日だった。
そして、隣に住んでいる幼馴染に祝って貰えるんじゃないかってちょっと期待していたりした。
そりゃ、あいつは少し遠い学校に通っていてなかなか会えないし、帰りが遅いのだって知ってる。
ただ、プレゼントも何もいらないから、今日という日に会っておきたかった。
誕生日を迎えた新しい自分。
何も変わらないけど、そんな自分を見て欲しかった。
なんて、ベッドに座って考えてみる。
ベランダ一つを渡ればあいつの部屋で、呼ぼうと思えば呼ぶことだって出来る。
でも、それをやってしまうとなんか負けた気分になる。
そんなのは負けん気の強い俺には耐えられないので、会いたい気持ちを我慢する。
と言っても、限界なんてもう寸前までに来ている。
嫌に時計の音が響いて、今日の終わりを告げようとする。
もう諦めよう、そう思って横たわろうとした瞬間、窓からコツコツと音がする。
こうする人物は一人しか思いつかないので、慌てて窓を開ければ風呂上りだろうか、濡れた髪のあいつがいた。
「ま、間に合った」
「…まさか、忘れてたんじゃねえだろうな」
「いや…そういう訳じゃないんだけど…」
「風邪引くだろ、入れよ」
そう俺が招き入れると、梨音は当たり前のように部屋に入る。
まあ、もう長い付き合いだからなにも気にならないんだけど。
俺の正面に座ると、ニコリと笑っていった。
「最初に…お誕生日おめでとう、赤也」
「おう、サンキュー」
「で、さ…言おうか言うまいか凄く考えてたんだけど…今日という特別な日を使って伝えさせて頂こうかと」
梨音の視線が泳ぐ。
不意に、俺の胸が鳴った。
「あの、ね…赤也はそう思ってないかもしれないけど…私、赤也のこと好きなの、幼馴染としてじゃなくて」
「・・・」
「…そう黙られると困るんだけど、その…なんか誕生日に困らせちゃって、ごめん」
困ってなんかない、寧ろ嬉しい。
そう言う前に俺の体は動いていて、梨音の体を力いっぱい抱きしめていた。
「あ、赤也?!」
「一つ…先に言っとくぞ」
「う、うん…」
「俺、かなり嫉妬深いからな」
「…知ってる」
「ちょっと話してるとこ見て嫉妬して、お前に迷惑かけるかもしれない…テニスが忙しくてなかなか会えないかもしれない…それでもいいか?」
「…うん」
腕の中で梨音が動く。
そして、俺の背に手を回す。
「…俺も、梨音が好きだ」
「…うん」
「本当に、ありがとな」
「…うん、今日の間に言えてよかった」
そう言って、どんな奴にも負けないくらい幸せそうな笑顔を浮かべた。
笑顔を届けに来ました
(その笑顔だけで俺は幸せになれる)
title by Aコース
Happy birthday!!
09,25