誕生日というのは一年に一度だけ。
周りがどんどん大人になっていく中、自分もそれに追いついたという達成感とか。
いろいろなものを感じる。
友達に「おめでとう」って言われて嬉しいんだけど、やっぱり好きな人に「おめでとう」って言って欲しいわけで。
そんなことを言っていても、俺は今片想い中なのである。
「はあ」
「何だよ岳人、誕生日なのに浮かない顔して」
「…亮」
誕生日なのにじゃない、誕生日だからこそこうなる。
そりゃ、祝って貰おうなんて虫が良すぎることだって分かっているけど、なんとなく、「誕生日くらい」って感じでいいこと起きないかとか期待してみたくなったりする。
どんなに「おめでとう」と言われたって、どんなにいいプレゼントを貰ったって、好きな人からの一言に比べれば、言っちゃ悪いが軽いものだ。
ふと視線を移せば、眩しい笑顔で友達と話す彼女。
その姿が眩しくて、愛しくて、あの声で「おめでとう」なんて言われたらどんなに幸せなんだろうって思う。
…ああ、俺、いつからこんな妄想壁になったんだろう。
「…そろそろ部活行かんきゃだよな」
「あ、そうだな」
必要なものを鞄に詰め、亮と一緒に教室を出て行く。
そんな俺の後ろで、他のものに比べ早い足音。
そして、少しうわずんだ声で「向日君」と名前を呼ばれる。
振り返れば、先ほどまで友達と話していた筈の彼女が居る。
彼女は俺に向って満面の笑みを浮かべると、俺の大好きなあの声で言った。
「今日、誕生日なんだってね」
「あ、ああ」
「お誕生日おめでとう!部活、頑張ってね!」
「それじゃ」と言って、軽く手を振ると教室の中に入っていく。
一瞬何が起こったか理解出来ず、俺の頭はショート。
亮の呼ぶ声で我に戻ると同時に、先ほどまで大人しかった心臓が一気に音を立て始めた。
高鳴る心音が煩い
(先ほどの君の声と心臓の音が頭に響く)
title by Aコース
Happy birthday!!
09,12