「どうしてそんなことしたの」
彼の獣のように鋭く冷たい視線が私に突き刺さる。
体はもうこれでもかってくらい血に汚れ、土塗れで髪だってぐちゃぐちゃ。
おまけに手足はしびれて感覚ないし、体だって動かせず、辛うじて顔を動かせる程度。
動かせるって言ってもやっぱりつらいから、視線だけを彼に向ける。
「あはは、すいません」
「質問の答えになってないよ、どうしてそんなことしたの」
「委員長のお役に立ちたくて」
「僕の役に?そんなこと言うんだったらこんなところで犬死なんて選ばないよ」
あら、私はもう死ぬの決定なの?
そんな風に見てないでちょっとぐらい治療とか…この人はしないか。
「まあ、似合ってるよその姿」
「褒め言葉なんですか」
「君には血の色が似合うからね」
「…有難うございます」
「ワオ、嫌味のつもりだったんだけど…よく喋れるね」
分かっているんだったら黙って頂きたい。
あ、でも死ぬ間際まで委員長の声を聞いていられるなんてちょっと…めちゃくちゃ幸せかもしれない。
こんな美声を子守唄に生涯を終える…満更でもない。
「委員長、そのまま喋り続けてて下さい…それ聞きながら逝きたいです」
「何馬鹿なこと言ってるの?死なせるわけないでしょ」
「さっきと言ってることが違います」
「口答えしない、咬み殺すよ?」
「もう是非…こんな痛い思いするぐらいなら委員長に咬み殺されて逝きたいです」
「君ってマゾ?」
「委員長の前なら、私、委員長の為なら死んだって構いません」
「今まさに死にそうだけどね、それにそんな忠誠心うっとうしい」
本当に欲しい言葉なんて絶対にくれない。
いつもの無表情で平然と私を見る…というよりも見下している。
ああ、もう瞼まで重くなってきた。
まだ委員長の顔を見ていたいのに…。
なんてことを考えていても、閉じるものは閉じてしまい、視界が真っ暗になる。
それでもまだ聴覚ははっきりとしていて、此方に走ってくる足音と「委員長!」と叫ぶ草壁さんの叫び声が聞こえる。
走ってくる草壁さんに向って、彼は「死にそうだから急いでね」と一言。
その死にかけに先ほどまで喋らせていたのはどこの誰なんですか、まあ私も喋っていたかったんですけれど。
草壁さんが委員達に指示を出している間に、彼がポツリともらす。
その一言が凄く嬉しくて、開かない瞼がもどかしくて仕方なかった。
行き過ぎた忠誠心
(そんなに尽くしてくれるなら、僕の為に生きてなよ)
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