重い。

今の私の気分を言うならこの言葉しかない。

先程から背中から腰回りにかけて強い圧迫感があって、時折背中にぐりぐりと何かが擦られる感覚。

動物でいうマーキングみたいな行動で、思わず何をやっているんだと言いたくなった。



「ねえ」

「・・・」

「ああ、無視ですか、際ですか」

「うるさい」



そう機嫌が悪そうにいう彼。

いや、どちらかと言うといじけている感じ。

最近の彼はすこぶる調子が悪く、情緒不安定気味。

一応彼の精神安定剤的な位置に置かれている私は、彼がこうなった時に今みたいに傍に居るしかないのだ。

今日の練習も相変わらずの調子の悪さでまともなボールさばきやシュートが出来ず、痛々しいくらい唇を噛み締めていた。

確かにアツヤくんが出て来たりだとか周りからのプレッシャーだとかがあるのは分かる、それに押しつぶされそうなのも分かる。

だけどだからと言って私に全体重と言わんばかりの重さを預けないで欲しい。

選手ではないから体なんて鍛えてないし、すでに支えることに心折れそうである。



「ねえ、吹雪くん…ちょーっと体重預けるのやめてくれないかな?」

「・・・」

「士郎くん、お願い」

「ん」



短く返事をすると、少しだけ私に体重を乗せるのをやめてくれる。

扱いやすいのか扱いにくいのか分からない。

ふうと一息吐いて、ねえ、と静かに語りかける。



「これは吹雪くんの問題だからって言ったらそうなんだけど、もっと周りの人を頼っていいんだよ?」

「・・・」

「言いにくいのは分かるけどね、重いでしょ?」

「でも、これは僕個人の問題だから」

「でも、今それを一人で支えきれなくなっているでしょう?無茶しなくていいんだよ」

「・・・」

「私はね、吹雪くん、君の力になってあげたいの、君を楽にしてあげたいの、一人で悩んでいないで、もっと私を頼って欲しいの」



腰に回されている彼の手を、そっと上から包みつつ語る。



「吹雪くん…士郎くんは士郎くんなの、それ以上でもそれ以下でもない、アツヤくんじゃない、私は吹雪士郎を好きになったの」



ぎゅっと腰に回された手に力がこもる。



「ねえ、今の私には何が出来る?」

「…なんでも、いいの?」

「うん」

「じゃあ、こっち向いて」



甘えた声を出され、首を回して彼の方を向く。

刹那、視界が彼でいっぱいになり、唇に柔らかい何かが当たる。

状況が掴めずにまばたきをしていると、あの悪戯めいた笑みが降ってくる。



「え、えっと…」

「ご馳走様」

「あれ、落ち込んでたんじゃなかったっけ…?」

「こうしたらキス出来るんじゃないかなーと思って、ごめんね」



謝ってはいるが全く悪びれた感じがしない。

そればかりか、艶やかな笑みを浮かべて「ねえ、もう一回していい?」なんて言いつつ顔を寄せてきた。







確信犯に告ぐ
(私の今の時間を返せ)



title by 水葬


確信犯の意味間違ってる気がしてたまりません。


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