とくん、とくんと音が鳴る。
それは私の心臓の音で、さっきからずっと鳴り止まない。
今日はずっと片想いだった彼と想いが通じ、初めて一緒に下校することになった。
もう緊急のしすぎで、そのことばかり考えていて、部活も手に着かず、事情を知っている友達からは苦笑いを贈られた。
もうすぐかな、と思っていたら、青い髪を揺らしながら彼が走ってくる。
「ごめん、遅くなった」
「ううん、私もさっき終わったばっかりだから」
「そっか…じゃあ帰るか」
「うん」
私が返事をすれば、彼が微笑んでくれる。
二人の距離は数十センチ。
私に歩く速さを合わせてくれる彼に、先程から鼓動が止まない。
たまに話をしながら歩いていると、彼が「あー」と間延びした声を出した。
「その…」
「うん?」
「手、繋いでもいいかな」
頬を染めつつはにかんで言う彼に、照れながらも頷くと、やんわりと手が握られる。
「あったかいね」
「そうだな」
二人の距離は数センチ。
先程よりも、かなり近づいた。
その状態のまま彼は私の家まで送ってくれた。
私の家についた時、何か打ち合わせた訳でもないのに、二人ともお互いの方を向く。
「ついた、な…」
「…そうだね」
「・・・」
「風丸くん…?」
黙り込んでしまった彼の顔を覗き込んでみると、「なあ」と短く一言。
「どうしたの?」
「ああー…目、瞑ってくれるか?」
「え?」
一瞬彼が言ってる意味が分からなかったが、すぐに理解出来て、顔が炎上しそうなくらい熱くなった。
「あ、う…」
「その…駄目か?」
「う、ううん」
「…そっか、じゃあ」
目を瞑ってと言って、私の肩に手を置く。
ひどく緊張しながらも、恐る恐る目を伏せた。
視覚が使えない分、自分の心臓の音がうるさいくらいに響いていく。
こくりと何かを呑む音が聞こえて、静かに唇に柔らかいものが降ってくる。
息はどこでしたらいいんだろうとか、今私変な顔してないかなとか、初めてのことに頭がフル回転。
数秒後、唇が離れていくのを合図に、二人とも瞼を開ける。
目があって、お互いに頬を真っ赤にしているのを見て、思わず二人同時に笑みがこぼれた。
待ちに待った愛しい人
(なんか、恥ずかしいね)
(そうだな)
title by 水葬
こういうほんわかしたのが好きです。