「よっ、ミスターベンチ」


頭上からこんな言葉が降ってきた。
あ゛ぁ゛っとどすの聞いた声を発しつつ、眼を飛ばして見てみれば、そこにはいたずらめいた笑みを浮かべる幼馴染の姿。
思わず、呼吸を忘れた。
なんでいんだよ、お前。

「なっ」
「へへっびっくりしたっしょ、特別に応援に来てあげたよ」
「んで第一声があれかよ」
「だって事実じゃん」

自分でも気にしている部分だったりするので、正直凹む。
しかし、顔には出さない。
そんなこいつに負けたみたいな感じになりたくない。

「ねえ、明王」
「ああ?」

ふいに名前を呼ばれる。
久々だ、こんな風に名前で呼ばれるのは。
周りの奴らは苗字ばかりで、名前で呼ぶやつなんていない。
こう呼ぶのは家族と…こいつぐらいだ。

「いいとこ見せてよ、流石に世界には着いていけないから」
「大きなお世話だっつーの」
「いや、これ切実だからね、あんたたちなら世界に行けるって信じてるけど、実際に見に来れるのは今日が限界なんだから」


だから、かっこいいとこ見せてよ。

…本当に言ってくれるぜ、こいつ。
意地でもいいとこ見せたくなるじゃんか。

「おい」

何呼ばれただけでびくついてんだか。
本当に飽きねえやつ。

「瞬きして見逃したりするんじゃねーぞ、俺様のプレーをよ」
「…うん、期待してる」

そう言った瞬間、試合開始のホイッスルが響いた。



君が為、ならば何なりと

title by hmr


丁度韓国戦ぐらい。

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