「ごめん…ごめんね」 目の前でポロポロと涙をこぼしながら、彼女が呟いた。 そんなに自分を責めないでよ、君が悪いわけじゃないんだ。 わかっていたじゃないか、こんなことになるくらい。 いつだって、彼女はまっすぐで、誰よりも明るくて温かくて、誰よりもあの人を見ていたじゃないか。 すぐにわかったよ、君のことだもの。 いつもどこかにふらりと行ってしまう彼を寂しそうに見つめる彼女の弱みに付け込んだのは俺だ。 どうにかして、俺と見て欲しかったんだ。 でも結局、彼女を悲しませてしまったんだね。 「…謝らないでよ、俺が悪いんだ」 「違う!フィディオくんは何もっ…」 「いや…俺が…ごめんね」 お互いに口から出てくるのは謝罪の言葉だけ。 どうしてだろう、もっといろいろ言いたいことがあるはずなのに、うまく言葉に出来ない。 今できる精一杯の笑みを浮かべて、彼女を安心させられるように。 「今度キャプテンが戻って来るってわかったら、真っ先に君に伝えるから」 何故だか自分のこの言葉がむなしく響いた。 ぼくらが幸せになれない理由 (俺にも君にも、彼の存在は大きすぎる) title by hmr |