「勇気くんはかっこいいね」
彼女が唐突にそんなことを言い出した。
行き成りのことで頭が回らずに食べようとした卵焼きがぽろりと箸から落ちた。
そのことに気づいて「うわあ」なんて情けない声を出すと、彼女が焦って「ご、ごめん!」なんて。
「なんか変なこと言っちゃったね」
「そ、そんなことないよ…突然だから…俺こそごめん」
「ううん、私こそごめんね」
「…どうか、した?」
彼女の表情が曇ったような気がして尋ねてみれば、困ったような笑顔。
はぐらかされるのかなって思っていたら、どうやら教えてくれるらしい。
が、またまた彼女の言葉に唖然。
「なんだか、勇気くん遠くに行っちゃいそうで」
「え…?」
俺が遠くに行く?
いや、別にそんな…今度円堂さんに会いに東京に行こうかな、なんて考えてたけど…。
あ、そんなことじゃないんだよね。
物理的なことじゃないん…だよね。
「勇気くんね、どんどんかっこよくなって、どんどん大きくなって…」
彼女が目を伏せる。
綺麗だと思った。
「私、何だか手の届かない存在になっちゃいそうで怖いんだ…私なんて本当に普通の人間だし、勇気くんは日本を救った有名人だし…」
「そんな、俺はただ…皆と一緒に居ただけだよ」
「でも、ちゃんと雷門のゴールを守ってたじゃない…円堂さんだって習得出来なかった、ムゲン・ザ・ハンドも習得して」
「でも…」
「…気にしないで、私が勝手に不安がってるだけなの…ごめんね?」
また悲しそうな笑顔。
彼女がそう思うんだったら、俺だって同じことを考えてる。
彼女に会えなかったあの日々、俺から心が離れないかって考えてた。
それに、日々綺麗になっていく彼女に、俺はつりあってるのかなって不安になる。
お互いにお互いのことで不安になってたんだ…。
手に持っていた箸を置き、彼女の体に手を伸ばしてぎゅっと抱きしめた。
少しだけ震えた声で「勇気くん?」と問われる。
「俺は、ちゃんと君のことが好きだから…」
「え…?」
「だからさ、君も、俺のこと…そのまま好きでいてくれないかな…?」
「・・・」
「頼りないかもしれないけど、ちゃんと君のこと、支えていくから」
「…うん」
俺の体にも手が回される。
本当にぎゅって、力がこもる。
「私も、ちゃんと勇気くんを支えていく」
「うん…好きだよ」
「…ありがとう」
不安なんて埋めちゃって
(ほら、すぐに笑顔になれる)
相互して下さった花音様に捧げます!
ありがとうございました!