俺が親に捨てられて、初めて家族と呼べる存在になったあの人。
「初めまして、夕弥くん」
そう言って手を差し出して笑うあの人、幼いながらも暖かさを感じた。
そして、握ったその手も俺を包み込むように暖かかったのも、今も覚えている。
俺はあの人と姉のように慕い、あの人も俺を本当の弟のように接してくれた。
あの頃あの人に求めていたのはもしかしたら母親から受けるような愛情だったのかもしれない。
でも、今は確実に違う。
俺は、あの人に家族には向けないような感情を抱いていた。
でも、伝えられる筈がない。
あの人は俺の義姉さんで、あの人にとって俺は義弟だ。
そうして月日は経ち、宇宙人騒動で、俺は漫遊寺を離れることにした。
そんな俺に、いつものように笑顔で駆け寄って来るあの人。
「夕弥くん!」
「…姉ちゃん」
間に合って良かったと微笑む姉ちゃん。
そして、寂しそうな顔をして、俺の頭に手を乗せる。
「…本当に…行っちゃうんだね」
「まさか寂しいのか?」
「そりゃそうよ、弟が旅立っちゃうんだから」
「・・・」
弟、当たり前のことだけど、こうも自分が落ち込むとは思わなかった。
「夕弥くん…?」
「姉ちゃん、一つ、言わせてくれるか?」
「う、うん?」
首を傾げる姉ちゃん。
今日で京都を離れる、しばらく戻れない。
だったら…もう伝えてしまおうじゃないか。
宇宙人とこれから戦うっていうのに、余計な未練なんて残したくない。
「俺、姉ちゃんのこと、家族だなんて思ってないから」
「え…?」
絶望した表情。
違う、姉ちゃんが考えてるような意味じゃない。
いや、嫌うならとことん嫌ってくれればいい。
寧ろ俺を拒否して欲しい、家族に恋してしまった馬鹿な俺を。
「俺、姉ちゃんを姉ちゃんだって思ってない」
「夕弥、くん…?」
「…泣きそうな顔はやめろよ」
「だって、夕弥くんが…そんなこ、と」
「姉ちゃんが考えてるようなことじゃない」
「え、じゃあどういう…」
分からないなら一生分からないでいい。
伝わって欲しいなんて思ってない。
いや…これは嘘になるかな。
俺は精一杯の笑みを浮かべ、姉ちゃんに向かった。
「姉ちゃん、大好きだった」
拝啓、大切なあなたへ
(愛してるなんて、もう言わないから)
title by 泣き虫ヒーロー
こういうの久しぶりに書くから無理があった。