イナズマジャパン練習中、校門辺りで此方を見つめる少女を見つけた。
少女…と言っても俺よりは年上だろうと思う。
走っていき、声をかけてみることにした。
「あの、何か御用ですか」
「あ、いや…違うの、ちょっと練習を見学に」
「でしたら中にどうぞ」
「そ、それは遠慮します…!」
俺の提案をなかなか聞かない彼女。
困ったように笑いつつも、中を気にしているので入ればいいのにと思いながら話を聞いていると、後ろから嫌な声が。
「おーおー、鬼道さんはいっちょ前にナンパですか、天才様は余裕ですね」
「…不動」
にやにやとしながら歩いてくる不動。
そして、馬鹿にしたように笑う。
俺が言い返そうとすると、俺の隣に居た彼女が俺の横を通り過ぎていく。
何をするかと思えば、思いっきり不動の額にデコピン。
デコ…ピン…?
「こら、何てこと言うの!」
「あ、あの…」
「いってえ、何すんだよ姉貴!」
その不動の言葉に、俺は固まった。
姉貴と呼ばれた彼女は、腰に手を当てて不動に困ったような表情。
「今のは明王が悪いでしょ、ほら、鬼道くんに謝って」
「はあ?!何で俺が謝んなきゃなんねえんだよ」
「明王?」
「…チッ、これは失礼しましたね、鬼道さん?」
「もう、それじゃあ駄目でしょ!」
いまいち話についていけない。
目の前では彼女と不動が口論している。
今、不動は姉貴と言ったか。
姉貴と言えば姉のことを言うことで…落ち着け、俺。
よく彼女の顔を見れば、目の辺りが…確かに不動に似ている。
「あの、貴方は…」
「へ?あ、自己紹介がまだだったね…うちの弟がお世話になってます、鬼道くん」
「おとう、と?」
「…フンッ、俺の馬鹿な姉だよ」
「馬鹿は余計でしょ馬鹿は!」
「いてっ!だからデコピンやめろって!」
この人が…不動のお姉さん…?
待て、落ちつけ鬼道有人。
何を戸惑っている…そりゃあ不動にだって肉親の一人や二人くらい居るだろ。
しかし何だ、本当にこの人が不動の肉親か?
…いや、この弟だからこそ、この姉だということか。
俺が見ていることに気づいたのか、彼女が振り向いてにこりと笑った。
「やっぱり実物はかっこいいね、鬼道くん!」
「…はい?」
「明王のチームメイトってどんな子達なんだろうって雑誌とか読んでてかっこいいなあって思ってたんだけど、やっぱりちゃんと本人に会うもんだね」
「…姉貴、俺に恥かかせんのか?」
「これのどれがあんたに恥じかかせてんのよ」
また話についていけそうになりそうだ。
そんなことを考えながら溜め息をつけば、彼女がにこにこと微笑みながら手を差し伸べてくる。
「これからもうちの愚弟を宜しくね、鬼道くん」
その笑顔に、何だか体温が上昇した気がした。
惑
(これからは鬼道くんのファンになっちゃおうかな)
(え?)
(おい姉貴!)
天敵の親族に一目惚れした鬼道さんと実はお姉さんが大好きな不動さん。
そしてこれで連載したいなんて考えたなんて言わない言わない。