私は先日、想いを寄せていた彼、鬼道くんと晴れて結ばれることになりました。
周りからは祝福され、微笑ましいカップルとまで言われてはいますが、実際どうなのでしょう。
「鬼道くん、これいいと思わない?」
「ああ、いいんじゃないか」
いつもこんな対応。
まあそりゃ、元々彼がこんな感じだとは知っていたのだけど、こう、想像していたのと違うというか…。
恋人になるなら態度が変わるんじゃないかとか…そんな勝手な妄想を抱いていた訳で…。
現に現実とのギャップにくじけそうなのだけど。
春奈ちゃんに相談しても「大丈夫です、お兄ちゃんは先輩のこと大好きですから」と言われるけど。
申し訳ない、本当に申し訳ないけど実感が湧かない。
思えば付き合いだす時もお互いに好きとか伝えた訳じゃなく、周りの「じゃあ付き合っちゃえば?」って雰囲気に乗って…。
本当は嫌々なんじゃないかな鬼道くん…。
「窪塚、どうかしたか?」
「え、いや…何も…」
現に今も苗字呼び。
名前呼びなんてされたらドキドキしてどうにかなりそうだけど、呼ばれてみたい。
「何もないことはないだろう?」
「いや、本当に何も…」
「ある、俺に言えないことか?」
あのゴーグル越しに見つめられる。
此方は見つめられて頬が赤くなるのを防ぐ為にどうしたらいいか必死なのに、これじゃフェアじゃない。
結局私の方がギブアップして、正直に話すことになった。
「その、ね…私たちって…付き合ってる、じゃない?」
「ああ」
「でもその実感が湧かないというか…」
「・・・」
「私としては、鬼道くんともっといろんなことしたいし…あ、変な意味じゃなくて、ね!」
下心がありありと感じられる。
何もまとめずに話したからかなり大変なことを言ってしまった気がする。
恥ずかしくて顔を下に向ける。
ぎゅっと皺が出来るんじゃないかってくらい服を握り締める。
と、かぷりと綺麗な効果音が付きそうなくらい耳を甘噛みされた。
「き、鬼道くん?!」
何が起きたかよく分からなくてとりあえず距離をとろうとする。
が、それは叶わず、私の背中に鬼道くんの手がまわる。
「え、えっと…離してくれないかな…鬼道くん」
「有人」
「あ、有人、くん…」
「こういうことが梨音はしたかったんだろう?」
不意に名前を呼ばれ顔がぼっと熱くなる。
そんな私に満足したのか、鬼道くんがニヤリといたずらめいた笑みを浮かべる。
「その、き…有人くん一体どうして…」
「俺はずっとお前を傷つけない為にもいろいろと我慢してたんだが…その必要はなかったんだな」
「ご、ごめん…」
「謝ることはない、これからその分埋めていけばいいんだからな」
「え、どういう…」
私が問おうとするとゴーグルを外す。
すると、綺麗な紅い眼が露わになる。
顎に手がすっと下り、引き寄せられたと思ったら、眼前が全て鬼道くんになり、唇を噛み付くように塞がれた。
攻撃準備期間
(あ、あの…んん!)
(もう遠慮はいらないな、梨音)
知依さん宅の五万打記念に捧げます。
なんかあれ?って感じになってますが…。
本当に五万打おめでとうございます!