スガタメ・タイガーの自覚
スガタメ・タイガーは思った。自分がだんだんジャガーに似てきた、と。
ジャガーというのは同じシンドウ家のメイドで、名をヤマスガタ・ジャガーという。ジャガーとは普段から一緒にいる為、少々似てくる部分があってもおかしくはないが、今回はそういう問題でもない。
ジャガーは所謂腐女子という部類に属していて、ボーイズラブが好きらしい。それは別段構わないのだが、問題はその妄想っぷりにあった。
よりにもよって、ジャガーは実在する人物で妄想をしているのだ。しかも、その人物というのが、自分達が使えているシンドウ・スガタとその親友のツナシ・タクト。
何故そんな事になったのかといえば、そもそもの原因はワコである。ワコのスガタ×タクトという妄想が、ジャガーの萌に火をつけたらしかった。
スガタに対して淡い想いを抱いていた為、タイガーは最初はほとほと呆れていた。男同士でそうなるなんて、あり得る筈がない。同性の絡みの何が楽しいのか、と。
人の気も知らないで全く呑気なものだ、と何度思ったか分からない。しかし慣れとは怖いもので、今となっては正反対に感じている自分がいた。
タクトをかっこいいというよりは、可愛いというくくりで認識するようになり、完全にタクトが受けにしか見えなくなっている。以前ならば、絶対にあり得なかったというのに。
スガタ×タクト?いいじゃない、おいしいじゃない。ワコ様の妄想だっておいしく頂いてるわ、なレベルに達していた。
結論からいえば、ジャガーやワコと同じ、腐女子の道に足を踏み出してしまったのである。
「絵になるのよねぇ……」
目線の先にいるスガタとタクトを見ながら、タイガーはぽつりと呟いた。
今現在、スガタとタクトが何やら話しているのだが、横に並ぶ二人を見るだけでも何だか色々と浮かんでくる。美少年同士、やはり絵になるのだ。
何を話しているのかは分からないが、スガタが何かを言った後、タクトが顔を真っ赤に染め上げた。ああ、タクト君可愛いな。迷いなくそう思ってしまう辺り、相当ジャガーの影響を受けているのではないかと思う。
ワコの暴走により、スガタとタクトが急接近して暫く。ワコやジャガーの妄想が現実へと変わり、彼女達はたいそう興奮していた。
やはり妄想よりも現実の方がいいのか、スガタとタクトを見る二人はとても幸せそうで、何処と無く輝いている。かくいうタイガー自身も、似たような反応を示しているわけだが。
「私も末期かなぁ……」
「タイガー?」
苦笑しながら呟けば、どうかした?とジャガーが訊ねてくる。不思議そうにしているジャガーに何でもない、と返しタイガーはくすりと笑った。
最初こそ、複雑な気持ちだったけれど。坊っちゃまとタクト君の絡みはおいしいし、二人も幸せそうだし、まあいいか―――。
fin.