週末の過ごし方


 週末、金曜日の放課後。タクトは寮の自分の部屋ではなく、スガタと共に彼の家にいた。
 夕飯を終え、今はスガタの部屋で寛いでいる最中である。スガタはベッドに腰かけて本を読んでおり、タクトはその横にごろんと寝転んでいる。
 いつからだったか、週末はシンドウ家へ泊まるのがタクトの習慣になっていた。初めの頃は夕飯をご馳走になっていただけだったのだが、週末なのだしついでに泊まっていけばいい、というスガタの言葉から泊まるようになったのだった。

「泊まるの、すっかり恒例になっちゃったね」
「誰かさんが遠慮がないからな」
「あ、酷いなぁ」

 涼しい顔でくすりと笑って、少しだけ皮肉ったように言うスガタにタクトは苦笑する。
 普段は優しい物言いのスガタだが、時々こうして少し意地の悪い言い方をする事がある。しかも、タクト限定で。
 何故タクト限定なのかと言えば、言うなれば愛故である。スガタ曰く、タクトは表情がころころ変わるからたまにいじめたくなる、らしい。
 つまり、つれない言い方をしてはいるが、なにもスガタはタクトが泊まりに来る事を渋っているわけではないのだ。元はと言えば、タクトを泊まりに誘ったのはスガタであり、来て欲しくない人間をわざわざ誘う筈もない。
 タクトもそれは分かっている為気にはしていないが、時々意地悪なスガタには苦笑させられっぱなしである。

「スガタってさ、たまに意地悪だよね」
「気の所為だろ」

 しれっと返すスガタの声には、何処と無く笑いが含まれていた。そんな声で言われても、説得力がない。これは分かっていて言っている、確実に。

「スガタのばーか」
「誰が馬鹿だって?」

 確信犯であろうスガタへの細やかな反撃の代わりにぽつりと言えば、読んでいた本を閉じてスガタがタクトの方を向く。
 にこりと笑顔を浮かべてはいるが、目が笑ってはいない。しかしかといって怒っているわけでもないので、タクトは気にせず言葉を続けた。

「あんまり苛めないでよ」
「何だ、不満か?」
「少し、ね」

 意地悪なスガタより、甘やかしてくれるスガタの方が好きだな。そう呟けば、スガタはくすりと笑って目を細める。
 ぎしり、とベッドがきしんだかと思うと、スガタが上から覆い被さるようにタクトを覗いていた。スガタの長い指がタクトの髪に触れ、優しく撫でられる。
 ちゅ、と額に唇が降りてきて、タクトはくすぐったさに片目を瞑った。

「ちゃんと好きだよ、タクト」
「うん、僕も好き」

 視線が絡んで、唇が近づく。スガタの手が頬に添えられたのを合図にタクトが目を閉じ、やがてどちらともなく唇を合わせた。




fin.





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