□綺羅星に願うと世界は変化する









そこは、別世界だった。



スポットライトの終着点。
一万三千人の視線の熱い視線の中で、彼は爽やかな汗を流し、歌い、踊る。



どんな人も、固唾を飲んでしまうほどの美声と、アクロバティックなダンス。
バク転が華麗に決まると割れんばかりの歓声が場内を包み込む。
それにまた、笑顔を見せ、手を振り、笑う。





ねぇ、どうしよう、俺。
あんたの、視界に、入りたい――。



それは俺が芸能界へ入るのきっかけの出来事だった。






★綺羅星に願うと世界は変化する





俺は黄瀬涼太。


俺にはある秘密がある。


それは、人気アイドルグループ『miracle』のメンバー青峰大輝が好き過ぎて、
好き過ぎて、彼の視界に入ることが目的でこの芸能界に入ったことだった。





昔から容姿はそこそこ平均より上だともてはやされ、クラスでカッコいい男の子No1とNo2の常連だった俺。


中学にもなると女子はもちろん男子もそこそこおしゃれを意識しだす。
本当のイケメンも、雰囲気イケメンが量産された現代。

俺程度の容姿は、渋谷や原宿に埋もれている。




そんな少しモテルけど別段変わったこともない日常を送る俺。


ある日、俺は、従兄弟の誘いを受け、しぶしぶあるコンサートに付き合い横浜まで
出かけた。従兄弟の母親が仕事でいけなくなり、俺が付き合うことになったのだ。


待ち合わせは、新横浜北口改札。



渋谷駅から東急東横線に乗る際も、JRに乗り換え新横浜を目指している際も
大きなショッピングバックを持つ女に挟まれる。


新横浜に行く電車ってこんなに混んでいたっけ。


そう思いつつ、電車を待つこと数分。


いつの間にか前を見ても後ろをみても女ばかり。



え、何これ。



俺は痴漢に間違われないように、サラリーマンの横に立ち、つり革を握った。


ぎゅうぎゅうに押されること五分。ようやくついた新横浜駅は、更に、女で
埋め尽くされていた。



俺は必死で従兄弟に連絡をとることに成功し、横浜アリーナまでたどり着いた。


渡されたチケットはバンドのチケットなどとは違い、大きく、印刷もこっている。

アリーナ16ブロック ○○列○○番と書いてある。


男が珍しいのか異様な視線を感じつつ、チケットを手にし、入口を通過しようと列にならぶ。


え、鞄チェックすんの? は?別に録音するやつなんてもってないから。


え、うちわチェック? なにそれ。変な風習っスね。



アリーナはこちらです。説明され、従兄弟とざわつく会場に入ると、ステージが前と後ろと真ん中にあった。その前後のステージをくるりと囲む円周。
従兄弟によるとメインステージ、センターステージ、バックステージそして円周は外周というらしい。俺たちはなんと外周の最前列。



興奮する従兄弟に、アイドルグループの説明をされる。


最近人気の出てきたグループで、CDはまだ出してないけど、ファンがたくさんいる。
メンバーは赤司、黒子、青峰、緑間、紫原というらしい。

従兄弟はリーダーの赤司様――様づけされないとオヤコロ? されるらしい。
なんだオヤコロって――を応援しているとのことだった。


公演開始五分前。目的のアイドルグループを呼ぶ、コールと手拍子が始まる。


従兄弟は双眼鏡と、ペンライト、うちわをもって、かなり忙しそうだった。


俺は男のアイドルに興味なんてなかったけど、従兄弟に持たされた赤司征十郎の
フルネームのうちわのうちの『征』『十』『郎』の文字のうちわを持って
ぼおっと突っ立っていた。



ライトが暗転し、会場はファンがつけたペンライトだけになる。
キャー。歓声が高くなる。



「今日から横アリ始まるぞ! 皆ついてこいよ!!」


キャー。歓声と共に歌は始まり、『miracle』のメンバーは、天上から登場する。




コンサートは始まった。





つづく。


20130420
一度行くと嵌るんですよね(笑)
ある方へ捧ぐ(笑)


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