□オヤコロ様とピザ黄ちゃん3















「コンビニで箸とスプーンくれたから、箸使えよ。やる」




「え……」



「ほら遠慮すんな。で、俺はお礼にお前からこのおかずを貰う」



取られてしまった一口たべた豆腐ハンバーグ。かっと熱くなる。




青峰君はガツガツと弁当を食べ、たまに話を振ってくる。



しどろもどろになりつつ、必死で答える俺にイラつくわけでもなく相槌を打つ青峰君。







どうしよう、やっぱりこの人が好きだ。





好き、好き。





「青峰君が好き――」





「は?」





「え!!!」




想いがあふれて口に出てしまった。




ど、どうしよう俺、馬鹿だ。絶対に嫌われる、ののしられる。



せっかく、話しかけてくれたのに。



ぶわり。涙があふれてきた。



弁当をもって、急いで走ろうとした。




が、腕をつかまれ、青峰君に体当たりした。



「ちょ、待て!! 言い逃げって、なんだよ」




「や、ごめんなさいっス。忘れてください! 気持ち悪くてごめんなさい。嫌わないで……」




「別に気持ち悪くなんてねーし!!」




「嘘だ」




「あー、つか、こんなタイミングで言うのかよ、俺。あのな、俺おまえのこと好きなんだよ」




「え……」




こんな都合のいい展開なんて、知らない。




騙されてる。もしかして、罰ゲームかなんか?





「罰ゲームっスか?」




「あ? 何言ってんだよお前。俺お前がロードワークしてるのずっとこの半年間見てたんだよ。雨の日も、きちんと毎日やってた。どんどんロードワークの時間が長くなって、きちんと体が出来てきて、すげーって感心してた。バスケつまんなくなってたのに、お前頑張ってる姿見て俺も部活とロードワーク頑張ったんだよ」




「うそ……」



「嘘じゃねーし、お前の家と俺の家結構近いんだぜ。ロードワークの時間もかぶりまくってたからよくお前の後ろ走ってた」




ぎゅ。強く抱きしめられる。




「今はましになったけど太っていた俺のこと、笑ったりしないんスか……?」




「別に体系も性別も関係なくね? 俺なんてガングロ、ガングロすっげー言われっし」




「別に肌の色なんて関係ないっスよ!! そんなこと一回も気になったことないっス」



「だろ?」



「……っス」



「なあ、もう一回言ってくんね?」



「あの……」



「おう」



「俺ね……」



「おー」



「俺、青峰君のこと、大好きです!!」



「おお! 俺もお前のこと好きだ!! 付き合ってくんね? 」




「はいっス!」





太陽の庇護を受けた青峰の笑顔は、涼太を笑顔にした。







昼休みが終わるから、急いで携帯の番号を交換する。夜一緒にロードワークすることになった。



涼太は嬉しくて、急いで帰宅の途につく。

青峰とのことを赤司と敦に報告するためだ。

半年前は早歩きすらできなかったのに、体が軽くどんどん走れる。

体重も減って筋力も体力もついたから全力疾走だって平気になった。



部屋の扉を開け、赤司がよく座っているテーブルの隣にあるクッションを見る。
赤司と敦はいなかった。

「赤司っちー? 紫原っちー?」

さわさわとカーテンが揺れている。窓開けっ放し?
網戸もしていない。蚊がはいるよ? 赤司っち、蚊が来ると「オヤコロ・オヤコロ」って謎の呪文を唱えて退治していたよな。



窓べりに立つと、学習机に美しい赤色の便箋が置かれているのに気が付く。


涼太はその便箋の封を開け、中に入っているカードを見た。
書いてある内容にはっとする。








―― 
 
涼太へ。

この半年、よく頑張ったな。



本当は願いそのものを叶えてやることもできたんだが黙っていた。


いいものを見せてもらった。ありがとう。



もう願いがかなったから、俺と敦はまた旅に出ることにする。


涼太はもう一人で栄養管理も運動管理もできる知識もあるし、意志も弱くない。

これからきちんとコントロールすることも大事だからな。

お前の好きな人間もお前のことが気になっているようだ。
告白してみるのもいいかもしれない。


僕たちは願いを叶えた人間のそばに長くいられない約束なんだ。

いつも遠くからお前を見守っていよう。

お前と出会えてよかった。敦もそう言っている。



僕もそう思える。




NO8の称号をお前に与えよう



――





「そ、そんなのないっスよぉぉ」

涼太はいろんな感情がいっぱいいっぱいになって号泣した。


もう会えない? 一緒にこれまで励ましてくれて、鋏で脅されて怖い思いもしたけど、でも一番親身になってくれた彼らがいなくなった。
その事実が悲しくて、かなしくてしょうがなかった。



NO8の称号ってわけわかんないっス。赤司っち。紫原っち。せめてお礼言いたかったっスよ!!

二人がよく使っていたクッションを抱きしめ、涙が枯れるまで声にならない嗚咽を漏らす。
半年間近くにいて、ダイエットする自分に激を飛ばしてくれた。
お菓子を食べようとすれば紫原に取られ、赤司に締め上げられ、本当の本当にモチベーションが上がらないときは二人で「そんなキャラじゃないんだけどなー」「まったくだ」といいつつ涼太を慰めてくれた。




「あららー。ねえ、赤ちん。出て行かなくていいの? 黄瀬ちん、泣きっ放しだよー」

「ああ、これでいい。あのカードさえ捨てなければ、涼太の本当のピンチにまた願いを叶えてやれるから」

「まあ、そうだねー」

「さあ敦、次に願いを叶えるのは誰だい」

「んーとねー、黒子テツヤって子だね」


「おや、この子もあの学校なんだね。なら、涼太にすぐに会えるかもしれないね」


「赤ちーん、俺また馬になろーかなー」

「敦、お前その遊び相当気に入っているな」

「まーねー」





END







20130228


オヤコロ様とピザ黄ちゃん、旧拍手文でした!
ピュアピュア峰とピュアピュア黄ちゃんの恋のお話。

むっくんとオヤコロ様が今晩あなたの願いを叶えにきてくれるかも★なんてね(笑)

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