□甘く噛む


















規則正しい寝息。

青峰は眠っている。


黄瀬は、今朝は早く目が醒めたので、隣で眠る恋人を身じろぐこともなく見つめていた。


褐色の肌は健康的で、今閉じられいる瞳は鋭く、藍色や群青の深い色合い。鼻筋も通っており、口は薄く、笑うと可愛い。

喉仏は男らしく、骨格も全体的に細い自分とは違い逞しい。


昨晩、むつみあった名残でお互い一糸纏わず、眠っている為、腰骨あたりに置かれた手が素肌に触れ、熱い。


黄瀬は、そうっとその手をとり、人差し指を一本含んだ。


かぷ。

決して強く歯を立てることなく、甘噛みする。

バスケをする手は固く、豆も出来ているが、愛してくれるときは、この無骨な手が意外なほど優しく愛撫することを黄瀬は知っている。

かぷ。

奥歯で柔らかく噛んで見るが、青峰は起きない。


ちゅぷ。




今度は中指を。




あむり。



甘噛みを繰り返した。



薬指。将来この指にペアリングを嵌めようと言ってくれた。


その願いは叶って、揃いのリングは黄瀬の指にもこの指にも嵌まっている。



小指。俺とお前って、運命の赤い糸で繋がってるよな。

中学生の頃の青峰はロマンチストだった。



親指。部の仲間たちで暇な時は、親指立ててやるゲームした。青峰はなかなか強かった。



指だけで、青峰と過ごした思い出が沢山蘇る。


いつのまにか、夢中になり。



気がつくと青峰の手は黄瀬の唾液で濡れそぼっていた。が、気にせず、また小指をしゃぶる。



青峰はまだ起きない。


もともと眠りが深い体質だから、熟睡してるときは悪戯しても
起きないんスよね。




ちゅぱ。



黄瀬は口から指を抜くと、ターゲットを手から体に変えようとした。


「んっ」



ビク!!



青峰が起きたかと思ったが、一言唸って、仰向けになっただけだった。



悪戯中の身としては、こっそり秘密の遊戯中、悪戯している人物にバレたくない。



身を固めて、息を潜めること一分。



やはり青峰は眠ったまま。



ほっと胸を撫で下ろす。




ちら。



喉仏のラインに目がいく。



じっと見つめて、青峰の喉仏の近くにまで移動して。




かぷり。



黄瀬は青峰の喉仏を堪能することにした。



あむあむ。




青峰の体のパーツは全て男らしい。



成長の早かった体だが、中学生のころと比較すれば、喉仏は格段に大きくなった。



この喉仏が嚥下し、声を使うときに動く。青峰の声が好きだ。


耳元で愛を囁かれれば簡単に蕩けてしまう。


ぴちゃ。



あむあむ。



もっともっと。愛する人を食べてしまうことは出来ないけど、青峰大輝を作り出している体のパーツ、全部分を口に含み、甘噛みし、舐めたい。




黄瀬は甘美な思考に酔いしれようとした。




首筋にある小さなホクロ。舌で凹凸を確かめる。




これも、甘噛みできるかなぁ。











「お前さっきからくすぐってぇよ。なんだよ?」





青峰が起きてしまった。



睡眠を邪魔されたその声は不機嫌さは浮かんでおらず、むしろ機嫌がいいような。



黄瀬は喉仏を甘噛みするため伏せていた顔を、青峰に向ける。




「よっと」




黄瀬を自分の上に乗せ、軽々と起き上がる青峰。




慌てて、褐色の裸の胸元に手を付き、バランスをとる。



青峰に跨がる体制。秘密なる作業がばれて、恥ずかしくて仕方ない。


だけど、筋肉のついた腕でしっかと、抱きしめられ、寝室から逃げることすら出来ない。



黄瀬は青峰の肩に顔を埋めた。




「はよ、黄瀬」



「ん、はよ……ス」




「何してたんだよ?」



さも楽しいそうに弾んだ声は優しく、黄瀬は耳の裏まで真っ赤になった。



「あおみねっちを……たべてた……」




「ふぅん? それで、美味かったの?」



「……うん……」




「ふはっ。お前マジかーわいーな。朝から癒されたわ」



顔をあげると、蕩ける位幸せそうな青峰の顔があり、黄瀬はそっと青峰に唇を寄せた。




「今度は俺がお前食べていい?」



昨日も散々食ったけど。





青峰の言葉に頷き、黄瀬は恥ずかしさに目を閉じ、体制を変えられ、ベッドに沈んだ。




また、青峰っちを甘噛みしたい、な。













END




20130216








blogの書きたかったネタより。
あむあむして、黄瀬ちゃんの涎ででろでろになってもそれが嬉しい彼氏峰です。
もっとやっていいのよ、なラブラブな二人でした(笑)

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