□カウントダウンを二人で
「まじ寒ぃー!!」
「つか、あともうちょっとで新年とか、時間たつの早いっスねー」
年末年始をキセキのメンバーで過ごそうと、帝光中学バスケット部のレギュラーメンバーは、大晦日の夜、神社で初詣をすべく集まった。
中学生が夜中ほっつき歩くのはどうかとぐだぐだくどい緑間は、赤司に何と説得されたのか想像がつかないが、意気揚々と待ち合わせ場所に一番に佇んでいた。
皆で集まったのが、22時。それから、露店の人形焼きや焼きそばなどを紫原が買い、
食べ終わるとまた他の露店を漁るということをしていたら、あっという間に23時になっていた。
黒子もこの時ばかりは影の薄さを最大限濃くしてはぐれないようにしていたが。
境内付近は人がごった返しており、その上暗く、視界が悪かった。
背の高いキセキのメンバーですら、ぱっと見つけられない位の混雑具合だった。
「って、皆は?!」
「あ? 居ンだろーが前に」
「やや、いないっスよ、青峰っち!!」
黄瀬は焦って隣にいる青峰に詰め寄る。逸れたらキャプテンになんと言われるか。
『俺たちだけで来ることを親に許可してもらったんだ。はぐれたり何か問題を起こしたときは……わかってるな?』
待ち合わせした当初に、この世のものとは思えないほどの美しい笑顔で、言われた言葉を思い出して、黄瀬は顔を青くした。
「別に、どーにかなるだろーが。俺たちだけでよくね?」
「いやいやいやいや、青峰っち。ダメっスよ!! 俺電話してみるっス!!」
カチカチと端末を操作し、電話を掛けるが、混雑具合が集中し電波が圏外になる。
「げーっ!! 青峰っち!! 紫原っちを探すっスよ。トトロより大きい彼なら絶対見つけられるっス!!」
だが、紫原はベンチに座っているのか目視では見当たらず、結局人ごみに逆らえるはずもなく、黄瀬と青峰は奥へ奥へ流されていく。
はらはらする黄瀬とは対照的な青峰は黄瀬をちらりと一瞥して、黄瀬の手をつないだ。
暗がりで周りの人々はそれぞれ自分の連れあいとの会話に夢中で、二人の会話は盗みきく者もいない。
「もうよくね? 別に。あいつらほっといて。お前と二人ここでカウントダウンのほーが、俺はいいんだけど」
「っつ!!」
(青峰っちは、時々俺の心に爆弾を落とす。本当は俺も青峰っちと二人がよかったから。なんて言えやしない。)
真っ赤になった黄瀬は「赤司っちに後で怒られてもしんねースからね」と青峰のいる方とは別の方向を向いて、それからぎゅっと青峰が握った手に力を込めた。
新年の足音はそこまで来ていた。
END
20121231
来年もよろしくお願いします★