□焔の色
今日からずっと共に暮らすのだ。
火神は胸を高鳴らせていた。
暮らしていた家は、以前はこじんまりとしており、涼太との婚姻が決まってから解体し、火を司る自分と竜神の長の一人が暮らしても遜色ない社を思わせる造りになっている。
神秘的な火柱は社の前に堪えることなく燃えつづけ、水晶がはじける音が聞こえる。
小さな竜神の子供だった涼太は、晴れて自分の伴侶になった。
婚姻の儀式を終えるまでは、家族と共に暮らすのがしきたりであるから、涼太は初めてこの屋敷に足を踏み入れる。
至るところに水晶と宝石が置かれ、それは涼太が安らげるような明るさを放っている。
「……綺麗……」
「あぁ。力を与えて発光させてる。気に入ったか?」
「はいっス」
夕食は竜神族の村で散々振る舞って貰ったため、あとは風呂を済ませ、初夜を向かえるだけだ。
「一緒に風呂に入るか」とは火神は言えずに、涼太を先に風呂に案内した。
火神は柄にもなく緊張していた。
婚姻の儀式をし、夜は二人交わるのだ。
涼太が風呂に浸かっている間、火神は外の火柱から火を取り、若芽を摘んだ香茶を入れる。
初夜にはこの特別な茶を飲む。若い夫婦の緊張を解き、男女ならば必ず子を設けることのできる程の力あるもので、催淫効果の成分も入っている。
涼太は婚姻儀式の流れを詳しく知らないまま今日に至ったと話していたので、きっと知らないが茶を飲むのもしきたりだった。
「いいお湯だったっス! 火神っちも入るっス」
「あ…あぁ。これ、飲んで寝台で待っててくれ」
「はいっス。いい匂いっスね」
「湯冷め、すんなよ」
「ん」
風呂に向かい、火神は息を吐いた。無邪気に笑顔を見せる涼太は可愛くて、堪らなかった。
そんな愛おしい涼太を自分の物にする。
傷つけず愛する自信はあるが、あの香茶を飲んだ涼太が乱れる姿を見て理性の箍が外れなければいいが。
体を洗い、火神は球体に小さな火を灯し、風呂に浮かべ、つかる。
涼太と今度風呂に入った時にこの小さな炎を浮かべた様子を見せればきっと喜んでくれるだろう。
想像すると緊張が解れていく。
炎はゆらゆらと揺れ、緋色になり藍色になり様々な色に変化した。
風呂から上がり、着物を羽織り、手短に自分用の催淫をもたらす茶を飲み干す。
すぐにカッと全身がたぎってくる。
待て、直ぐ効き過ぎやしないか。
涼太は大丈夫なのか。
寝台のある部屋へ急ぐと、天女の羽衣を思わせる薄紅の布の垂れ下がる寝台で涼太はふるふると震えていた。
着物ははだけ、刺激ぷくりと主張する胸の飾りは赤く熟れていた。
浅い呼吸をし、艶っぽく吐息を吐いた涼太に火神は、時を忘れみいってしまう。
「か、がみっ…ち。変なんス。体が急にあつくなった……」
「ああ。涼太には話してなかったけど、さっき飲んだものは、夫婦の契りを交わすために飲むんだよ」
「夫婦の契り……? 午前中にしたっスよ……」
「あれは婚姻の契り。夫婦の契りつ、つーのは……」
火神は寝台に乗り、呼吸の整わない涼太に口づけを落とした。
体を優しく抱きしめ、もう一度今度は舌を薄い唇に差し入れ、深く口づけた。
「ふっ、ん、ゃぁ!」
歯の羅列を舐め、逃げる舌を追い、唾液を合わせあう。
口づけになれない涼太は火神の愛撫に身を固くした。
深く合わさった唇を離すと、ぷつりと糸を引く唾液。
口の端についた涼太の唾液を火神は舐めて涼太に微笑みかけた。
「夫婦の契りは肉体を使って交わる初夜の儀式なんだよ。だから…今からお前を抱く」
「抱くって何……? 一緒に寝るの?」
涼太の初な反応を見て、火神は確信した。涼太は性交の知識がないと。
おそらく性の知識が皆無だろう。
初めての初夜について、誰も教えてはくれず、寝台を共にすると言っても、ただ火神と抱き合って眠るものだと思っているらしい。
「結構強引かもしんねーし痛てぇ思いさせるかもしんねーけど、お前の事一生大事にするから、涼太、お前の全てを俺にくれ……」
意味のわかっていない涼太を見おろし、火神は自分の着物を脱ぎ捨て、涼太の着物を剥いだ。
生まれたままの姿の涼太は美しかった。
綿雪の柔らかさをもつ白い肌は水晶の明かりの中で輝き、金糸の産毛がきらきらとしていた。
熱に浮された涼太は火神が助けてくれると思ったのか、力を抜いて抱きしめてくる火神を受け入れている。
尖った粒が火神の分厚い胸板に触る。
口づけを落とし、その一つの飾りを含み、一つを軽やかに何度も撫でて、桃色の乳輪をなぞり、そして尖りをきゅと摘んだ。
更に芯を持ち、固くなる胸に吸いつくと、テラテラと粒は唾液で輝く。
口づけと跡を残し、全身を舐めていく。
耳の裏、首すじ、鎖骨、背中、腰、胸、腹、時間をかけて大事な伴侶に所有印を刻んでいく。
そして下半身を触ろうとした時、茶と火神の与えた刺激で崩壊寸前の涼太ははっと我に返り、叫んだ。
「やっ、見ないで!」
必死に隠そうとするのは、性器ではなく。
太股だった。
涼太の中心は小さく、火神の物と大きさも色も全く異なっていた。
ふるふると震える性器は、火神のものの半分もなく、下生えもなかった。
蜜をはしたなく垂らし、一生懸命に立ち上がるものの横。
しなやかな右足にあったのは琥珀色から虹色に光彩する鱗だった。
竜神の証の鱗の近くは、その鱗に力が宿る為、成長が遅いという。
涼太以外は手や足や耳付近にあり皆一同にその知覚にある器官は成長が甘いのだ。
鱗は太ももの付け根にあり、一部分にしか生えておらず、隠しているので見えるのは数枚程度だったが鱗の美しさに火神は言葉を失う。
付け根の普段は隠れている部分にある鱗の場所は、涼太の両親と赤ん坊のときから世話役だった笠松しか知らない。
「綺麗だ……。大丈夫だから、手を退けてくれないか。美しい長の印だ……」
「そんなことないっス。皆は綺麗な一色だけの色なのに俺だけたまに虹色になるんス」
「そっか。けど、涼太は綺麗なとこしかねーよ。心も体も、この鱗も。美しすぎて俺には勿体なく感じる」
手をどけた涼太の片足を取り、開かせ、鱗に口づけを落とした。
「ァ!」
「感じる場所なんだな……。涼太覚えておいてほしい。お前は全て綺麗だ……」
泣く涼太の涙を吸い、火神はそっと涼太を俯せにし、膝を折り曲げさせた。
尻たぶを開き、桃色のすぼまったそこに口を寄せ、火神は舌を尖らせ舐めた。
「やだっ、汚いから!」
「だから、お前は汚いとこなんてねーんだよ」
皺一本一本、丁寧に舐め、体内に唾液を流し込む。解れ、腸壁から少しずつ分泌液が出てくるまで舐めつづけた。
涼太はひっくひっくと泣きつづけているが、抵抗せず時折快感に身をよじり熱い吐息を漏らしている。
自分の与える刺激に素直に感じてくれる。火神は何とも言えない感情が湧き上がってくる。
指を唾液で濡らし、恐る恐る柔らかさの増した秘部を触り拡張していく。
くちゅり。くちゅ。
水音は静寂の中響き、涼太は羞恥で更に涙が出ているが素直に喘ぎ声を出してくれる。
今まで経験がないことが功を奏した。
火神はとんでもない興奮に酔った。
太い指を四本くわえ込むまで辛抱強く、火神は涼太を宥め続ける。
快感に酔い逃げようとする涼太を抱き込み、一番反応を示す場所を刺激する。
ピュク。小さな性器も感じているのが解る反応を見せる。
火神の雄は角度と硬さを持ち、早く入りたいと脈を打っている。
静かに指を抜き、意識のとびかかった涼太に「愛してる」と告げ、火神はそれを涼太の体内にうめた。
涼太の内壁は火神をすんなりと受け入れ、すぐに根本まで火神の楔を飲み込んだ。
最初は穏やかに、だが涼太が感じ嬌声を上げ、感じきっているのをみて、速度を上げ尽く。
ゆさゆさと揺さぶり、涼太を絶頂へ導く。
ヒュクリ。また張り詰めた小さな性器から白濁が。
「アッ、ンぁ。ひぅ」
「っーー!!」
程なくして、火神も涼太の中に白濁を放った。
「やぁ、お腹……あツい……」
火神の体液は火を司るだけあり高い熱をもっている。
深くまで入った熱の篭ったものを受け、涼太は初めての感覚に戸惑いつつ、快楽に身を任せた。
その日は涼太が意識を失うまで、火神は繰り返し、涼太を抱いた。
◇
「ん……」
「……起きたか………大丈夫か……」
「初夜ってさっきまでしたことをする日だったスか?」
「そうだ。これから毎日あれをやることの始まりの日を初夜って言うんだ」
「そうっスか。分かったっス」
「身体大丈夫か?」
「うん。恥ずかしかったし痛かったけど、でも、契りがうまくいってよかったっス。これで晴れて火神っちのお嫁さんなんスよね」
「おぉ」
初夜の定義が少し違ったが、涼太が勘違いしている間は身体を毎日味わえる。
火神は欲望に軍配をあげ、罪悪感に蓋をした。
寝台から起き出た涼太は、窓の外をみた。
「あー、火神っち! 火柱の色変わったっス!」
火柱は今までほとんど赤い色をしていたが、黄色のまじった色に変化していた。
火神が契りを交わした相手が竜神であり長の一人だった為、力が加わり変化を起こしたらしい。
二人は火柱の美しさに時間を忘れた。
◇
「あ…匂いがちげー。もう火神のにおいしか、しねーわ」
「くそ、火神め……」
「このことを赤司君が知ったら、血の雨が降りそうですね」
END
二人の初夜話でした。甘くてエロスな感じの二人。
これから毎日火神様は可愛くて愛らしいお嫁さんと幸せな生活を送ります。
アンケート設置初期に票が多く、嬉しかったので書き上げたものでした。
20121123