□ブルームーン









残暑が厳しい日中も夜では秋の訪れを感じる。


蝉は短い夏を憂い、夜は歌わず、選手交代とばかりに秋の夜長の鈴虫たちが鳴いている。


ブルームーンが夜を支配する日。

夏休み最終日、忘れがちな誕生日を仲間と恋人が祝ってくれた青峰は、終電を逃すとまずいと散り散りになった仲間たちを送り出し、恋人とむつみあっていた。


恋人の黄瀬とバスケ。青峰の構成要素は主にこの二つで、今は黄瀬を堪能していた。


後ろから穿つ自分の下にいる黄瀬の背中が火照り、筋肉が均等についた張りのいい身体から汗がしたたる。その汗を粘膜質な舌を這わせ、舐めあげ、優しく歯をたてる。


角度を変えるために、繋がったまま黄瀬をひっくり返すと、高い声で果てた黄瀬の精が青峰の腹についた。

更に刺激を与え、やわやわともどかしい刺激を与えつづけ手淫すると、起立し臍につくほどのそれはふるふると奮え、出し尽くしたとばかりに勢いもなく薄い液を垂らす。

手に掬いあげ、黄瀬に見せ付けるように舐めると、真っ赤になった顔を伏せて、恥ずかしいスと小さく青峰を責める。


丹念に身体を舐め、赤い花を下着一枚にならなくては見えない場所に散らす。


所有の証は黄瀬の白い身体に這え、また、場所が場所だけに刺激され果てた黄瀬を見て、青峰の征服欲を満たした。


この前買い足して開封したゴムは1時間前になくなり、生でいいと了承した黄瀬の中に遠慮なく入った。

熱くぐずぐずな中は蕩けていつつも、青峰のものを心地好い締め付けで奥に誘った。抜き差しを繰り返し、体位を変え深く繋がる。


もっともっと奥へ。


ぐちゅぐちゅと結合部から音が聞こえる。


えげつない音は夢みがちな乙女からすれば、セックスの幻想など消えうせるかもしれない。

生々しい音が無音の空間に響く。




黄瀬が女なら、今頃子を宿しているだろう。

不毛な想像だが黄瀬が子供を実際に宿すとなると、自分は嫉妬して手段を選ばず小さな命を奪っているはずだ。

黄瀬が自分以外の対象にこれ以上興味を持つのは青峰にとって苛立ちしか生まないのだ。

ただでさえ、黒子や高校生活、モデルの仕事と好奇心旺盛な黄瀬の興味がいくものばかりが周りにあふれている現状がたまに嫌になってしまうのに。


自分だけを見ていればいいものを。


黄瀬を大事にしたいという日だまりのように温かい気持ちと、支配し衝動のままに扱いたいと思う気持ちが青峰の中にある。


後者の暗い感情は黄瀬に悟らせないようにおくびにも出していない。

同じ性質を持つ赤司は気がついているが、察しのいい緑間や黒子さえも気がつかない自分の狂気。

いつか持て余す日がきて、黄瀬の総てを支配したいと思う日がくるかもしれない。

甘美な暗い誘いは青峰の笑みを深くさせた。



黄瀬は自分に告白する前散々悩んでいたらしい、性別の壁なんて問題にならない位黄瀬は自分を虜にしているのに、なんて純粋で綺麗な存在なのだ。






はぁっはぁっ。あぁ、んん!






浅い呼吸を繰り返し行う黄瀬は快楽に溺れ、空気を取り込む。



苦しく息をつく黄瀬に意地悪をするつもりもないが、舌を絡め、溢れ伝う唾液を飲む。

形のいい喉仏に口を寄せ、サバンナの王者の子が甘噛みするように一噛みすると黄瀬はまた精を出した。


限界まで足を開かせ片足を己の肩にのせ、鎖骨を噛んだ。もう透明に近い黄瀬の分泌液と、結合した場所が赤く熱を持ちはじめているので、青峰はもう一度激しくグラインドし、黄瀬の中に放ち、すぐに抜いた。


はぁはぁと呼吸するとそれに合わせて、大量に出てくる白濁を眺め、脊椎に快感が通り抜けるほど満足した青峰はほの暗い感情をまた奥に潜め、黄瀬に愛を囁いた。


月はいつの間にか、高い位置に差し掛かり、月明かりは二人を照らす。


消耗して動けない黄瀬を身奇麗にしてやり、シーツを変えて横たえてやれば、恋人はすぐ夢の中に旅立ってしまった。

寝顔を堪能して、そういえば今日は満月だったかと窓から月を見上げた。

黄瀬のマンションのベランダの柵はくっきりと影を作っている。


日の中にいると錯覚させる明るい月の光。

ブルームーンは願いを叶えてくれると黄瀬は言っていた。


時計の針もてっぺんに近い。もう日付がかわりそうだが今日は俺の誕生日。



なぁ、ブルームーン。


俺の狂気が膨れることなく、黄瀬の最重要で一番がいつまでも俺のままである事を俺は願うから叶えろよ。




(まぁ興味のある対象は潰していけばいいだけだがな)


黄瀬の唇に軽くキスを落とし、青峰は隣に横たわり目を閉じた。明るい光が気になって目をあける。風邪をひくとまずいと判断し窓をしめ、ブラインドを下げた。





もう月の光は入ってこなかった。








End




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