□Maple Syrup
最近、紫原はメープルシロップに嵌まっている。
スナック菓子も大好きだし、主食の肉も好きだが、この甘露な液体の色は食べる度に天使を思い出すから、余計に美味く感じるのだ。
久しぶりの本部滞在。
キセキと呼ばれる軍幹部とその側近だけが入れるサロンに集まって、午後の一時を過ごしていた。
光は優しく窓から入り、緑間のピアノ演奏は、眠気を誘う。
同じ部屋で、それぞれが珍しくリラックスし、ティータイムを楽しんでいる。
赤司は、一人掛けの豪勢な椅子に腰掛け、チェスの次の一手を考えている。
青峰はソファーで眠りにつき、穏やかな寝息を立ててぐっすり夢の中だ。
紫原は、チラリと天使を見た。
以前の包帯姿から変わり、自分と同じ軍服を纏い、首には首輪が嵌まっている。
しかし、美しさは変わっておらず、むしろ軍服の影響で更に際立っているように思えた。
瓶にたっぷりはいったメープルシロップをスプーンで掬い、舌鼓を打つ。
とろみのある液体は舐めるとさらさらとして、幸せを運びこむ。
青峰の近くに座る天使を、おいでおいで、と呼び寄せる。
天使は疑いもせず、紫原の横に座った。
「ん」
スプーンを渡すから、食べさせて。
目で訴えたら、ふわりと笑う天使は紫原が持つスプーンを瓶ごと持ち、零れないように掬った。
「はい、あーん」
おや鳥を待つ小鳥と同じくパクパクと口を開け、シロップを待つ。
スプーンが傾けられ、とろ、と液体が口に流され、甘味が充満した。
やっぱり、美味しい……。
何度も飽きることなく、シロップを口に運んで貰う。
(天使は峰ちんの宝物。俺も大事にしてあげないと)
スプーンを取り返し、お礼にとメープルシロップを天使の口に運んでやる。
薄いピンク色の唇はそっと開けられ、シロップは口に入った。
こくり、と嚥下され、あたかも自分の体液出して飲まれた感覚になった。
紫原は満足感に浸る。
二杯目はたっぷり掬って、また口に持っていく。
量が多かったのか、天使は一度に嚥下できなかったようで、小さな口からシロップが溢れ出し、端から垂れていく。
テーブルに瓶を起き、手で拭おうとする天使の手を握り、天使の口元を舐める。
ぴちゃ。
「ん、ッ」
ぴちゃ。
少し垂れた唾液もなめとる。
美味しい。
ベタベタがとれるまで舐めつくす。
青峰は、キセキの幹部に対しては寛大で、自分のイヌを構うのを容認している。
神秘と言える程の美しい体を暴くことは出来ないが節度を持てば、今の紫原がするような事は咎めない。
キセキ以外の他の人間がイヌに触れると100%撲殺するのに。
つくづくキセキの幹部でよかったと紫原は思うのであった。
れろ
最後にもう一舐めして、近かった顔を名残惜しくてゆっくり離した。
「ぁ……ありがとう紫原っち」
自分の名前を呼んでくれた天使。
綺麗で可愛くて、堪らない。
「ねー、今度はクッキー食べたいんだけどー? 食べさせてくんねー?」
机にあった銀盤に盛りつけられた、様々なクッキー。
耳元でこそこそ話をするようにお願いすると、天使はにっこり微笑んだ。
「勿論いいっスよ」
紫原と黄瀬のやり取りを赤司は微笑ましく思いながら見ていた。
午後の穏やかな時間はゆっくりと過ぎていく。
END
妖精から見たらワンワンは天使なのですー。
ゲス峰様でもキセキだと容認しちゃうのね。わぉ、心が広いわ、ゲス峰様。
っとお思いでしょうが、その後むっくんが出来ないことをあれもこれもして、
おいしく料理され頂かれちゃいます。
メープルプレイ……。あまそー……。
20121029