□焔の愛
「涼太。これをお前に」
「ありがと……」
シャラ、シャラ。小さいころにもらった髪飾り。10年使っていたもので当時は子供だったからか小振りになってしまったが、祭事のときに使っていた涼太にとっては大事なもの。
火神はそっとその髪飾りを外し、花嫁のために作った最高級の宝石をあしらった新しい髪飾りを優しくつけてやった。
藍玉、紅玉、黒蛋白石、葡萄石、翠玉、月長石、琥珀、蒼玉、桃簾石、金銀の細工。
花嫁になった涼太に似合うように1年かけて職人につくってもらった。
黄金の色の髪と瞳にぴったりだった。
「綺麗、嬉しい……」
竜神族の花嫁。それはそれは美しい容姿に魂、心。
涼太は人間界でも自然を司る神々が住む世界でも有名な存在で。
そんな涼太は、同じ竜神族の長たちの息子全てからの求婚を断り、晴れて本日、火神のもとに輿入れとなった。
真っ白な衣に包まれ、嫁入りの儀式。
隣には火神が寄り添い、永久の愛を誓う。
神同士との婚儀は二人だけで神殿で行う形式になっている。
神殿は竜神族の管理が行き届いた場所にあり、天井が高く、静寂に包まれている。
お神酒を飲み、書状に名を記す。
そして、誓いの口づけをする。
火神の口元に朱を引いた涼太の紅が付き、涼太は顔を赤らめそれを指で拭ってやった。
頬には散々小さいころから受けていたものを、初めての口で受け止めた。
恥ずかしい。
火神は真っ赤になる涼太にもう一度口づけを落とす。
「あ……一回でいいんスよ?」
「したくなった。悪りぃ。でも、これからは毎日一緒にいれるな」
「はぃっス……」
火神は涼太のその柔らかな手をとり、神殿の出るために扉を開ける。
神殿の階段を下りたところに長の息子たちが集まっていた。
その奥には両親や親族、世話役の笠松、村の竜人たち。
皆花かごを持って、二人を待ってくれている。
「ったく、ありえねーな」
「はあ、青峰もう仕方ないのだよ……」
「ほら、いい加減二人を祝福してくださいよ」
「黒子、お前は火神と仲がいいから涼太にも会いやすいはずだ。だからそんなに落ち着いていられるんだろう。全く解せぬわ。今からでもこの婚儀を白紙にできる方法はないのか」
「赤司君、落ち着いてください」
「あいつひねりつぶしてーちくしょー」
村を出て、火神と暮らす。それは幼馴染と毎日一緒にいれなくなることで。
涼太は両親よりも長く一緒にいた幼馴染たちと毎日会えなくなる寂しさに視界を潤ませた。
火神は涼太の肩を抱いて、階段を下りた。
行って来い、火神はぽんと背中を押して、涼太を幼馴染たちの輪の中にいれた。
「皆大好きっス。火神っちが一番だけど、皆は俺の大事な幼馴染っス。これからも仲良くしてほしいっス」
「当たり前だろーが! てめーは」
「おめでとうございます。黄瀬君、髪飾りにあってます」
「黒子っち、ありがとう」
「涼太、何かされたらすぐ村に戻っておいで。喧嘩したらすぐ縁を切っていいんだからな?」
「赤司っち、心配してくれてありがと」
「黄瀬、毎日こちらから通うといいのだよ。夫婦別居は人間界でも流行っているというし、どうだ?」
「んーごめんなさい緑間っち。火神っち、意外にさびしがり屋さんなんスよ」
「うー、黄瀬ちーん!」
「紫原っち……」
涼太はぽろぽろと涙を流し、紫原を精一杯抱きしめた。
幼馴染たちで固まって、抱擁した。離れがたい幼馴染たちの存在。
「涼太様、いい加減にしないと火神様がさびしがりますよ!」
笠松がそう言い放つまで、抱擁はとかれなかった。
火神は苦笑し、涼太を呼ぶ。
「涼太、長の勤めで2、3日に一回は会えるだろうし、さびしがるな。俺が悔しいだろ?」
「うん」
「さあ、行こうぜ」
皆で神殿から移動する。
花かごから沢山の季節の花が空を舞う。
涼太は火神をそっと見上げ、幸せそうに笑んだ。
◇
「長の勤めを2、3日に一回ではなく毎日にすればいいんじゃないのか、緑間。そうしよう!」
「赤司、いい考えだな。皆満場一致になりそうだな」
END
神パロの続編を希望してくださった方へ捧げますー。
書いててたのしかったー。
最近赤司様がギャグ要因になりつつある…(笑)さすがエンペラー様。
で、今実は二人の出会い編を書いているという。
希望してくださったおかげで広がりましたー。わーい。