□アンダーグラウンドエンペラー










「いやっス!! いやだ!!」






「はいはーい、マジ無駄だからー。ねー!! 赤ちんー!」




「敦。助かったよ」





「チュッパの新味とまいう棒ねー」





「分かったよ。手配しよう」




「つーか暴れんなし。赤ちんの命令じゃなかったらお前、今頃俺にひねりつぶされて死んでるよ?」





大雨の降りしきる真夜中。





濡れそぼった体は冷え、ガタガタと震える。





美しい金糸は雨に濡れ、小さな唇から洩れる白い吐息。




黒衣のスーツを纏う紫色の髪の男に背後から両腕を囚われる。






血の色より鮮やかな髪をした男は、部下を従え黒塗りの車から降りてくる。






その部下がすぐに傘を翳すのが当然だといわんばかりの態度。






磨かれた革靴にぴちゃりと泥水が跳ねる。





この街のアンダーグラウンドを支配する男に囚われた哀れな生け贄。黄瀬涼太。







「そんな安っぽいコートじゃ寒いだろう? 僕がこれからお前に何不自由ない生活を与えてあげよう」






「五月蝿い! これは青峰っちがくれたんだ! お前にとっては安物かもしれないけど、俺にとっては!」






「ん? 涼太にとっては、なにかな?」





「ひぐっ!!」





銃のトリガーに手をかけ、それを口の中に突っ込まれる。







冷たい銃はどことなく火薬の匂いがする。






「あんまり可愛くないと、殺すよ。僕は言うことを聞かない犬が嫌いなんだ」



「う…ぐ…」




「さあ、涼太、僕を選ぶって言ってごらん。そしたら、あのゴミは始末しないであげる」




喉の奥まで突きつけられた銃は歯にあたる。






ポタポタと開けたままになっている唾液が落ちる。







支配者は嗤い、空いている片方の手で唾液を拭った。







「ん? 聞こえないよ。ああ、これが邪魔だから喋れなかったんだね……」







そっと外される凶器は、男の懐に消える。







愛する人を盾に取られ、自分も命の危機にさらされる数日をすごし涼太は、もう限界だった。






「選ぶから、あんたを選ぶからっ」





後ろで羽交い絞めしていた男がすっと拘束をといた。









バシャ。水たまりに崩れ落ちた。涙で前が見えない。






雨と涙で濡れた頬を撫でられ、汚れた体ごと抱きしめられた。






ひんやりとしたスーツから、雨以外の嗅いだことのない香りがした。






逃走劇の終焉。走り逃げ続けたくたくたで冷え切った体は、恐怖で抵抗すらままならないし、抵抗すらできない。










「大事にしてあげるよ」







「ちょっと赤ちんー。もし銃うっぱなったら俺にまで貫通すんじゃねーの! 勘弁してよー」







「ああ、それは心配ないよ。涼太はいい子だから、僕以外は選ぶはずがない。ね、涼太」








こくりと頷く涼太の目には光が灯っていなかった。








「さあ、屋敷へ帰ろうか? お前ら行くぞ」














アンダーグラウンドエンペラー。







それは、とある帝王の二つ名だった――。












END




赤黄赤黄!!
赤黄になるとうちの峰様は抵抗力0になりますー。最早定説となりつつありますー。
その後屋敷で帰宅をまっていたレオ姉に体を綺麗にしてもらう黄ちゃんとか想像するとムフフフ。
突発故のクオリティー。アイムソーリー。

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