□二人は双子U前編














side涼太







「涼ちゃん、おはよ」

「さつきちゃん、おはようっス!」

待ち合わせの時間に外にでて、さつきちゃんのお迎えにいくとさつきちゃんは長い髪をなびかせて佇んでいた。


大ちゃんは昨日から黒子っちと一緒に緑間っちの家に泊まりに行ってる。

俺は夜遅くまで仕事があったから合流出来ずに、家に帰ってきた。

今日は月曜日。

お隣さんの幼なじみ、さつきちゃんと俺と大ちゃんは、小学生の頃から一緒に登校している。






「大ちゃんは学校で合流っスわ」


「ミドリンのお家に泊まったんだって?」


「そう。黒子っちも一緒だったらしいっス」

「え〜! 私も行きたかったー。でも、面白い組み合わせだね」

「うん、緑間っちと黒子っちは赤司っちから、大ちゃんの補習たのまれたみたいっス」


「私と涼ちゃんで教えたらよくなかった?」


「それが、俺とさつきちゃんだと大ちゃんも開き直って勉強しないって赤司っちが……」

「成る程、否定はできないわね。うーん、でも行きたかったー。テツくんの寝顔見たかったなぁ」


「ははっ。俺も行きたかったんだけど、仕事で。お邪魔できる時間じゃなかったし、今日さつきちゃんを迎えにいけないのも嫌だったから」

「大丈夫よ! 涼ちゃん、私一人で学校くらい登校できるから。でもありがとう」


いつもは朝からうるさい大ちゃんがいるから賑やかだけど、今日は穏やかに二人で歩く。


さつきちゃんは黒子っちが大好きで、黒子っちがいかにカッコイイかをプレゼンされた。
惚れた瞬間のアイス事件や、部活動での活躍。本を読む横顔。黒子っち好かれてるっスね。

ほっぺたが少し赤くなってて、かわいい。


「あ! これ。昨日の撮影、すごいかわいいお店でとったんだ。休憩中に買ったんだけど、さつきちゃんに似合うと思うんだ」

持っていた紙袋からシュシュと化粧ポーチの入った包みを渡した。

「え! いいの?! 今明けていい?!」

「うん。鞄持つから明けて中身みて」

鞄を持ってあげる。包みのリボンを外し、包装紙を破る。

ピンクのチェリーがモチーフの原宿のブランドは最近とても人気がでたアーティストがプロデュースしていて、さくらんぼが好きなさつきちゃんにピッタリな気がしたから買った。

おまけでもう小さめのサイズ違いを貰ったのがあるから自分用でもう手首に嵌めていた。

「わ〜!! かわいい〜! ありがとう涼ちゃん!!」


大ちゃんは洋服やブランドは興味ない。


さつきちゃんは流行に敏感なオシャレさんだからブランド名が分かったみたいで、「高かったんじゃないの?」と不安そうに見上げてくる。

「全然! 社販価格で売ってくれたっスから」

ちょっぴり嘘をついてしまったけど、さつきちゃんがとても喜んでくれたからよしとしよう。


最寄り駅について、改札から駅の構内に入る。



この線は混むことと痴漢行為が激しいのが問題になっていて、さつきちゃん一人じゃ心配なのだ。


やっぱり緑間っちのとこ、行かなくてよかった。


混み混みのすし詰め電車に乗って学校の最寄り駅まで揺られた。

あと数分もあるけば、中学の校門が見えてくる。たわいない話をして歩いていたら、スマホがなる。

「ん? 大ちゃんからだ」

受信画面を見ると、大ちゃんからメールが入っていた。

「なになに?」

指ですいすい操作してメールを読むと、「反対方向の電車に乗って戻ろう迷った。最短で行ける路線に乗り換えできるらしいがわからねぇ。迎えに来い」という内容だった。


緑間と一緒に家を出ればいいものを、家に一旦立ち寄ると大ちゃんは、先にでていったらしい。

緑間の使っている路線は、朝でも早い時間帯は空いていて、地下鉄だったから大ちゃんは席に着くなり寝てしまったということだった。


始発駅は座れるから、油断するとねちゃうんスよね。

「えー。大ちゃん、道に迷ったみたいっス……」

「えぇー!……相変わらずだね。大ちゃん」


「「方向音痴治らないよね(っスね)」」


「わわ。どうしよ」

「ほっといたら? 赤司君に大ちゃん遅れるって伝えて、涼ちゃんだけ先に朝練してなよ。二人で遅れると練習三倍確実じゃない?」

「うーん、練習三倍はきついっスね。でも、心配だから、俺も遅刻って事にしておいて!! 赤司っちに謝っておいてほしいっス!」



くるりと踵を帰して、大ちゃんを探しに駅に逆戻りした。



(やっぱり最終的には、私より大ちゃんよね)


女の子をとても大事に扱う涼ちゃんだけど、大ちゃんを最優先なのは今も昔も変わらない。


そんな涼太が弟のようにかわいいさつきはもらったシュシュを腕に嵌め目を細めた。


さすが、涼ちゃん、センスいいな。







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