□シトロンの砂糖漬け














「ねぇ、大輝君」






柔らかなマフラァに包まれて、寒い外気に頬を赤く染めた大輝君はちらりと僕を見てきた。





外が寒いこの地方では暖かく柔らかな青いマフラァと、ふわふわと毛足の長い真っ白い耳宛と、手袋は必需品だ。





長めのコォトに厚手のズボン、ブーツ。




小学生の僕たちにとってクリスマスは楽しいイヴェントの一つだ。




さっきまで、クラブ活動の仲間とクリスマスパァティをしてプレゼント交換をした。


帰り道、二人で歩く。僕は今右目にものもらいができて、眼帯をつけて居るので、優しい大輝君は家まで僕を送ってくれると云う。



皆で居るときは、幼い態度をとって、よく笑って居る大輝君は、二人きりになるととても大人しく、優しい。









(もっと、一緒に居たい)









そう云えれば、いいのだろうけど。








恥ずかしくて、云えない。






「寒いな、黄瀬」





フゥゥゥと会話とともに吐き出された吐息は白く混じり、僕に降りかかる前に無くなった。







空は暗く、灰色はどんどん濃くなっていく。



これから雪が降るって天気予報が教えてくれた。





「大輝君、お母さんがシトロンの砂糖漬けを作ってくれたんだ、一緒にお家で食べよう。マァマレイドのシフォンケィキや蜂蜜クッキィやもあるから、一緒に温まろう。
もし、お部屋が暑ければ、炭酸水も用意してあるから……」







(大輝君さえ、よければ一緒にクリスマスを過ごしませんか?)






空から雪が降ってきた。ふわふわと踊る雪。どんどん降ってくる白く儚いものを手袋に乗せる大輝君。




「黄瀬、見てみろよ! 雪の結晶だ」




自慢げに差し出された雪の結晶は、大輝君の体温が手袋から伝わるのかすぐ溶けてしまう。







(嗚呼、僕の気持ちみたいだ……)





なんだか無償に泣きたくなった。











「黄瀬! 俺、お前の家に行くからそんな顔すんな!! あと、俺、御前の事好きだ!!」









雪がたくさん舞い落ちる中、僕は大輝君の飛び切りの笑顔を左目が写した。







大輝君に抱き着くまで、あと七秒。













END




シトロン果皮の砂糖漬けとかマァマレイドとか炭酸水とかの単語を使いたかっただけのお話。好きな作家さんがすごく幻想的できれいな色使いと言葉を使うのでそんな感じのをかきたかったのね。
こういうの好きな方いらっしゃいますか?



2012.10.04




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