□青天の霹靂1





※第三者視点青黄
青黄22歳設定









私は、都内に数店舗展開している、ハウスクリーニングの従業員だ。


今日は顧客の青峰様のお宅の清掃で、高級住宅街の一角にある青峰様のお宅を訪ねる為に準備をする。


青峰様はご職業柄外出することが多い。


契約時に鍵を預けてくださっているので、その鍵と清掃用具を持って一人で自転車で出かけた。

目的地はここから近い。



二か月前に当社を契約なさった青峰様は、寝室以外の部屋や水場の掃除を私共にご依頼していらっしゃる。



世田谷区にある、いかにも高級マンションって感じで、間取りは3LDKあって大きいのだけど、基本的にきれい好きでいらっしゃるのか、いつも少しほこりをかぶっているだけで、一時間もかからないうちにきれいに出来てしまう内容だった。


青峰様のご職業は、先日午後19時から始まっていた国営放送のスポーツニュースを流し見していた時に初めて知った私だった。


テレビ画面に映ったのは青峰様で、ダンクシュートを決める瞬間の迫力のシーンは息を飲んでしまった。



顧客の話は厳密なので、興味がなさそうに「この人有名なの?」と父に訪ねたら、鼻の穴を大きくさせて「青峰大輝を知らない奴なんてニュースを見たり、新聞を読んだりしている奴なら、まずいないぞ」と私を非常識人間のように見てきた。



父は彼のファンらしい。




プロバスケットボール選手が青峰様のご職業。


22才と若いのに年俸がとんでもない方なのだと父が豆知識を教えてくれた。


なるほどと思った。2、3回お会いしたことがある青峰様は大層日焼けをしていらっしゃってーー自黒の可能性もあるけどーー165pある私でも見上げなくてはならないくらい長身で、筋肉が鎧のようについた立派な体格をしていた。


あの年齢で、高級マンションにおひとりで住まわれているのでお金持ちではあるとは思っていたのだが、まさかそんなに知名度のある有名人だとは夢にも思っていなかったからびっくりした。





私は、今巷で大人気のモデルに最近はまっていて、その人に夢中だったから、青峰様が有名人でも媚を売ったりするつもりもない。


青峰様が在宅されていても、もくもくと仕事をするだけなのだ。

今日はご在宅なのかしら。


エントランスにあるインターホンの下のマンション共通の鍵を用意しつつ、刺す前に2001号室を押す。






ピーンポーン。






…………。




しばらくたっても何も反応がないので、エントランスの扉を鍵で開け、中に入りエレベーターを呼んだ。



箱はブーンという空調の音がした。ガコンっと音がして停止する。扉が開くと、ひんやりとした空気が顔にかかった。



青峰様のお宅の鍵を開けて、「こんにちは〜。失礼致します〜」と誰もいない部屋に向かって声を張り上げた。

シーンという無音が帰ってくる。



やはり誰もいない。安堵し、少し肩の力を抜いて靴を脱いだ。



よしっ。今日もささっと掃除をしますか。まずは空気の入れ替えから!


張り切って窓際にむかう。



レースのカーテンを開けると、眼下に広がる空と住宅街とコントラストが目に飛び込んできた。


さすがに最上階にすんでいらっしゃるので見晴がよい。


6月半ば、暑い熱気がむわっと窓から入ってくる。


清掃中に暑かったらクーラーを使用していいと言ってくださっているので、空気の入れ替えが終わったあとにでも入れさせていただこう。


リビングのテーブルを見ると、ブランド雑誌が何冊か無造作に放られていた。


失礼な話だけど、青峰様が好んでそれを読んでいるのか疑問な位、青峰様とかけ離れているジャンルだった。


美容室にいくと出されるような雑誌で、男性向き……というよりかは女性寄りで、パリコレクションの洋服が掲載されている雑誌なのだ。


私の好きなモデルも載っていた最新号で自宅に同じものがあるから、ついついまじまじと置かれている雑誌を見てしまう。


女性へのプレゼントでもお探しなのかしら。でも青峰様って、家には女性の痕跡はない気がする。



大柄な青峰様の横に立つ方はどんな方なのだろう。


小柄な方だとちぐはぐの身長が物珍しくて振り返られ、長身の方だとお似合いの長身カップルだと振り返られるカップルのような気がする……って。



……まずい!! 顧客のことを探るような行為なんてプロ失格だ!



自分を叱咤し、切りかえて、必死になって掃除をした。



30分も経った頃だろうか、掃除機をかけていると、リビングに続く扉に人影が現れた。



掃除機の音でまったく聞こえていなかったので、飛び上るほど驚いた。


青峰様、今日ご帰宅される日だったのね、とご挨拶のために掃除機を止め、振り返ると、青峰様より少し小さいけど平均身長をはるかに超えた男性がいた。



青峰様より二回りほど華奢で体格も違う。そして、サングラスにマスク……!!






え!! 強盗?!!






ヒッと声を詰まらせた私は必死で悲鳴を上げようとした。焦った男は、「うわ!! 待つっス! 叫ばないで!」と私の口を長細い手のひらで塞いだ。



とてもいい香り。最近の強盗はいい匂いするの?! 


パニックになっている私に、サングラスとマスクをとって「青峰の知人ですから! あやしいものじゃないっス! 信じて!!」と懇願してきた。


私は悲鳴を忘れ、呆然とその顔を見つめた。小さな輪郭に収められた目。鼻筋は通っていて唇は薄く桃色をしていた。髪の毛はサラサラとし枝毛など見当たらない。




美しい顔は、私が毎日のように動向をチェックしている彼、黄瀬涼太だった。







「き、きーちゃん!?」












2へつづく



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