□King












黄瀬は媚薬もまだ効いて、肋骨は何本か折れている状態。肩は脱臼し、腹は殴りすぎたかドス黒く変色していた。




埃まみれの汚らしい恰好で赤司に合わせると、瞬殺される可能性があったから綺麗にしてやった。

イヌの世話はご主人様の仕事の一つだしな。

赤司と対面し、早速俺の今後の人生計画を話すと、心底馬鹿にした風に嗤う。

「面白いからいいだろ?」


「そうだな。なら、大輝がもし死ぬときは一緒に死ぬようにしてあげよう。主人を失った番犬なんて可哀想だろうから」


「それはそれで楽しそうだな。だが、生きながらえて尚、俺のために生きるのもいいな」


「まぁ、大輝に任せるよ。僕はこの子から聞き出したいことがある。それまで植えつけたい記憶の計画でも練っていろ」


「了解。恩に切るぜ」


豪華な椅子に座った王者。オッドアイの瞳がきらりと光る。

黄瀬は殺気に似た、鋭利な視線に意識を取り戻したらしい。


煌びやかな絨毯へと転がしていたので、ここがどこか認識するのに時間を要しているらしくしきりに瞼を上げ下げしていた。

「あかし……」

声は掠れ、熱に浮かされた犬は、身を固くした。

俺は高みの見物をすることにし、ソファに腰かけ、じっとイヌの様子を見下ろす。

赤司の目を見ると拙いという事は敵さんにも周知の事実らしい。動かせない体で黄瀬は逃げようとした。

ゆっくりと赤司は椅子から立ち上がり、黄瀬の側に片足をついた。

「黄瀬涼太。ようこそ、僕の城へ。さて、君の頭に僕は用があるんだ」

「あ、嫌だ……いやっス……」

金髪の柔らかな髪をゆっくり何度も撫でて、赤司は黄瀬の額の汗を拭ってやっている。
予め抵抗は出来ないように、風呂に入れたあともう一つの肩も外したから、媚薬の効果はありつつも相当な痛みだろう。

「痛いことはしないよ、大輝とは違うからね。さあ僕の目を見てご覧」

操られたように赤司の目を見た黄瀬。
黄瀬にとってのBAD ENDは俺にとっては最高の幕の始まりを意味する。



あぁ、また笑いがとまらねぇわ。









情報を洗いざらい吐いて、もう何にも出てこなくなった。
もう深夜だ。
赤司はちらりと俺を見てきた。

俺はワイン片手に脳内にある理想のイヌ像を赤司に伝える。



黄瀬は意識を失ってはいないものの、目の焦点があってなく虚空を見つめている。
赤司の目は脳内にダイレクトに刺激を与える。何時間も赤司の能力の稼働した目を見て、黄瀬の頭のシナプスはショートしているはずだ。

そっと黄瀬の頬を触り、赤司は記憶操作を始める。
催眠の用量で赤司が紡ぐ言葉は俺にとって至極優越な言葉ばかり。
終盤にさしかかったころ、黄瀬は今までの従順さが嘘のように暴れだした。

最後の抵抗か?

無駄な足掻きだな。

煩わしかった。殴ってやったら赤司が珍しく目を見開いて、「大事にするんじゃなかったのか」と聞いてきた。


小さな声で「たいが」という名前を呟き、痛みに耐えながら涙を流し、暴れる黄瀬に苛立った。

「俺以外の名前は口に出すからだろ。まだ、駄犬だからな。教育だよ、教育。これくらいは余裕だろ?」

「可哀想な涼太。ご主人様が僕ならもう少しは優しいかもしれないね。だけど、君の主人は『青峰大輝』だ。それを忘れてはいけないよ、涼太」



黄瀬は幾筋にも涙を流し、声にならない声を上げた。
魚のように一回跳ね、そして、体中の力を無くし、黄瀬は意識を無くした。









「お利口な犬の完成だ。大輝、ちゃんと面倒見るんだよ」






「ああ。もちろんだ」








END







ゲス峰はボコ峰に変身するくらいワンちゃんを殴ってますが、それも愛情だと思っています。
次はむっくん編。

愛すべき皆様へお送りします!

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