□巡る運命1















過去世なんて信じてない人にとっては、ビックリするような絵空事だと思う。







けど、私には前世の記憶があった。









もう一度、あの人に逢いたい。










私をもう一度見つけて欲しい。








絶望の淵にいた私を救い上げてくれた人。










時代が変わっても、あの人の想いだけは魂に刻み付けられたように残っている。








だから、散々な目にあって有り得ないと思っていた性別を選んで、また生まれてきたんだよ――。















――







中学生には手が届かないブランドのカーディガン。


お気に入りのシュシュと最近発売した評判のグロス。シャンプーはノンシリコン。


いつもきちんとしていたい。それが私のポリシー。



私は黄瀬涼。モデルをやりつつ、学業にも余念なく過ごす、中学1年生。



スタイル良し、勉強よし、スポーツも得意で、うまい人のプレーを見るだけで自分のものにできちゃう。


人からみれば、羨ましいと嫉まれるスペック。



ちっとも満たされることのない心を持つ私が妬ましいだなんて。


この世は不公平だ。







物心ついたころから、私は誰かを探していた。



それは、漠然としたイメージだったけれど、年を重ねていくごとに夢を通して鮮明になっていき、何故彼を探したいのか、何故女になったのかと自分への長年の疑問を解消する糸口になっていった。





モデルの仕事のスカウトを原宿で受けたときだって、あの人に逢える可能性が高くなるかもと思ったからだった。


自分の思惑とは正反対で、ちっとも目的の人とは会えず、反比例してどうでもいい人たちには知られ、認知度が右肩のぼりになった。


今じゃ、街を歩くのも一苦労。



嗚呼、面倒。



ただ、校内ではそこまで過激なファンの生徒はいなくて、平和だ。


告白はされ徹底的にお断りを繰り返していると『黄瀬涼は告白しても玉砕するだけ。告白するだけ無駄だ』という定説が広がり、今では果敢に告白してくる人は滅多にいなかった。




私の事なかれ主義、八方美人が幸いして、先輩も同級生も振られた生徒でさえも穏便に挨拶くらいはする中になっていた。




「涼ちゃん、おはよー!」



朝の眠たい空気をまとった私に声をかけてきたのは、入学して初めて告白してきたバスケ部の部長だった。



朝練を終えたのか、シャワーを浴びてシャンプーのいい香りがした。





「おはよーございまっス、先輩。朝練終わったの?」



「おーバスケ部は今年はやべーぞ! 1年に超いい素材ばっか入学してきてっから」



「ふうん」



「ははっ。興味なさそうな返事だな」



「うん、バスケはあんまり。やったことないから」


「そっか。気が向いたら、見に来てくれよな!!」



「うん。先輩、頑張ってね」



「おう! サンキュ! じゃ、俺もう行くな!」




先輩は走って校舎に入っていった。朝から爽やかで元気っスね。



靴箱で上履きに履き替えて、そこであったクラスメートとしゃべりながら教室へ向かった。






つづく




ちょっと一風変わったにょた黄連載始めます。
ハッピーエンド目指したいです。

◆設定

黄瀬涼…女子。モデル。前世で助けてもらった人が好き。中学二年。

笠松幸男…涼の幼馴染。中学二年。涼が好き。

青峰大輝…バスケ馬鹿。

黒子テツヤ…青峰と同じバスケ部員。涼のことが好きかも…

他にも登場していきたい予定!

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