廻る巡る、私をおいて




「ばーちゃん!」


ばーちゃんは


『サ ヨ ナ ラ』


ごうごうと燃え盛る小さな扉の向こうに


自ら入っていきました。



巡る巡る、季節は巡る。

過ぎる過ぎる、時は過ぎる。

私を置いて、

私を置いて。


嗚呼、たったの2時間で

語りきってしまえるものだったのか

私の71年は。


嗚呼、何故あの時

素直になれなかったのだろうか



嗚呼、何故あの時

私の方が浮かれていたのだろうか


私の人生はあの病気と同じ。

苦しくて苦しくて、どうしようもないのかと思えば

楽で楽でたまらない。

その繰り返し、ずっとずっと


嗚呼、最後に一つだけ

嗚呼、この子に託しておこう。

嗚呼、この子に遺しておこう。


今ここに、私が出来る最期の術を−


ばーちゃんは、

逝きました。

ばーちゃんは、

逝ってしまいました。

サヨナラ、サヨナラ


ばーちゃん、またね


「ばーちゃんね、サヨナラって言って、行っちゃったよ、トーイトコ」
「そうか…そうなのかぁ」

とーちゃんは、ぽとぽとと水玉を落としました。

ぽとぽと、ぽとぽとと


進む進む、デンシャは進む

廻る廻る、季節は廻る


私を置いて、

私を置いて。



出発進行−







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