Hot Breath
Hot Breath(トキタマ)
「こんなところでガス欠だなんて…」
「ごめん…。浮かれて給油するのをすっかり忘れてた」
山間のスカイラインをドライブ中の事。
トキオにしては珍しい失態だった。
もっとも、タマキにはしゃぎながらもっと遠出したいと言われたら、それを叶えたくなるのは仕方がないことだと思う。
トキオの目算では麓のガススタンドまでは持つ予定だったのだが…。
幸い、ガス欠したのが下り道だった為、道路のど真ん中で立ち往生する羽目にはならず、今は峠の道路脇の眺望スペースに駐車している。
「JAFが来るまで2時間くらいだって…」
「携帯が繋がってよかった」
外はすっかり暮れて、夜の帳が下りている。
空調が切れて急速に温度が下がっていく車内。
タマキがわずかに身を震わせた。
「寒い?」
「ん……。ちょっと……」
「ほんとごめん」
「トキオが謝ることなんてない…」
そう言い掛けた時、トキオの手がタマキの頬をとらえた。
そのまま顔をトキオの方に向けさせられる。
「……んっ……」
そして、合わさる唇。
「な…?」
「じゃ、しよう……」
そう言いながら、さらに深くなる口付け。
「何…を…?」
「あったかくなる事……」
「……っは……っ……ん……」
「あったかくなった?」
「……っ……ん……熱いっ……」
「それはよかった」
「…じゃなくて……こんなとこで………あっ……」
「大丈夫。誰も見てないから」
「そんな…ことじゃ……」
「それに、仮に誰か見ようとしても、見えないよ……。これだけ曇っていれば」
車内は息苦しいほどの熱気に包まれ、窓ガラスは二人の息と熱気ですっかり曇っている。
タマキは自分たちの行為の熱さを目の当たりにして、羞恥にその体をさらに赤く染めた。
「馬鹿……」
「嫌?」
「……嫌じゃ………ないっ……あっ……」
再び抱き寄せられ、汗ばんだ肌が触れ合う。
「…っあ………はっ……っ……ん……はぁ……」
JAFが到着まであと1時間。
熱い吐息はまだまだ止みそうにない──。
《Fin.》
[*前] | [次#]