それでいいのか3
あれから数日。
ミーティングルームでは、タマキが今日の泊まる先について話している。
「じゃあ、今日はユウトのところに行っていいか?」
「うん、もちろん」
「サンキュ」
「えー、タマキちゃん、僕のところには今度いつ来てくるの?」
「週末は隊長のところに行くから、その次な」
「わかった。絶対だよ」
ソファーで雑誌を読むフリをしながら、カゲミツはその光景を見ないように努める。
止めたい。けど止められない。
もどかしさと焦燥感でいっぱいになる。
しかし、こんなふうにいろんな家に行くのなら、ただのお泊りという気がしないでもなくて、心配する事ではなかったのかと、期待もする。
「なんだか、一時期のアラタを見ているみたいだな」
カゲミツは独りごちた。
一人で寝るのを嫌がって、あちこちに泊り歩いていたアラタ。いろんないたずらは仕掛けていたようだが、どれも本気ではなかったはず。
タマキもきっとそうなんだろう。
「本当にそう思ってるのか?」
隣に座ったヒカルがぼそりとつぶやく。
「え?」
「もともとタマキのことが大好きな奴らばっかだ。どこで本気モードに入るかわかったもんじゃないぜ」
「キヨタカの事心配してるのか?」
ヒカルは、呆れた表情でカゲミツを見る。
「人のこと気にかけてる場合じゃないんじゃねえの?」
「………」
痛いところを突かれて、言葉に詰まる。
ヒカルは、そんなカゲミツを横目で見て、やれやれという風に肩をすくめる。
それから落ち着いた声で言った。
「キヨタカのことはさ、それほど心配してない。こういう時くらい、貸してやる懐の広さは持ち合わせているつもりだ」
そこで、言葉を区切ると、カゲミツの方に向き直る。
「でも、お前はどうなんだ? このまま手放していいのか? 最初に助けを求めたのはお前になんだろう?」
「………」
助けを求めて……たんだろうか?
ただの、気晴らしや八つ当たりだったような気がしないでもない。
「ほんと、お前わかってないな。あの優等生なタマキがそういうとこ見せる意味。……まあ、やりかたは褒められたもんじゃないけど」
ヒカルは、何も答えないカゲミツを見て、それからため息を着くと、ワゴンに戻るといって、部屋を出て行った。
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