Static shock
「帯電体質? カナエが?」
「うん…、そうみたいなんだ」
いつもの困ったような笑みを浮かべながらカナエが頷く。
二人でソファーにもたれながら、見ていたテレビ番組がそんな話題に触れ。
俺がそんなにビシバシ感電するものかと素朴な疑問を投げつけた時の事。
「…そんなの全然気づかなかった」
「そりゃ……。君に触れる前にいろいろ気をつけているからね」
「そうなのか?」
「いつも近くにある物に触れてから手を握ったり、何もないときでも髪に触れ、頬に触れてからからキスしたり…」
「あ……」
いつものキスの前の儀式めいた行為に、そのような意味があったのかと初めて知った。
単にスキンシップが好きなのかと思ってたら、そんな意味があったのか。
今では頬に触れられるだけで、ドクンと胸の鼓動が高鳴るというのに。
思わせぶりな態度で惑わせやがって、罪作りなやつだと思ってたら。
思いのほか、気を遣わせていたらしい。
「じゃあ、そういう前触れなしにキスしたらバチッってくるわけ?」
「きっとね」
「ちょっとやってみたい」
気遣いをまったく無にするような発言だとは思いつつ、好奇心は抑えられない。
「タマキ君……」
困ったような飽きれたような顔をしてカナエが、言葉を途切れさせる。
「なあ…だめか…」
上目遣いに覗き込む。
カナエが断れないのは目に見えている。
暫し心の中で葛藤し、それからため息をついてカナエが口を開いた。
「じゃあ……するけど。……これで、俺のキスが嫌になったりしないでね」
そういうと、そっと顔を近づけてきた。
予告の触れ合いなしのキス。
でもさ。
キスってそういうもんじゃないかと思う。
触れたくなって、気持ちが動いたら。思わずしちゃうようなさ。
いちいち考えたりせずに。
したいと思うんだ。
だから絶対嫌いになったりなんかしない……。
それに……。
お前にキスされると、背筋に電流が走るような感覚、いつもしているからさ。
今更って気もするけど。
ピリッとくる感触と共に感じたのは、ダイレクトに受けるキスへの衝撃と、快感──。
まじりっけなしの感情を受けるようで。
こういうキスも、悪くない……と思った。
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